「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ウーゴ・ヴィエイラのゴールはデザインされたゴールだった [Lカッププレーオフ第2戦 神戸戦レビュー]

 

 

前半を0-1で折り返し、このまま試合が終わっても勝ち上がりの権利を持っているのはマリノスだが、次に失点すると切符の行方はヴィッセル神戸へ移る。自陣での不用意なパスミスからの失点によって、残り45分を最も難しいシチュエーションにしてしまった。

 追い討ちをかけるように、接触プレーで打撲した扇原貴宏はプレー続行が難しくなり、62分に交代を余儀なくされた。すでにユン・イルロクからウーゴ・ヴィエイラにスイッチし、右サイドバック松原健も万全の状態とはいえないため、これ以上の交代カードは切りにくい。リードしているはずのマリノスが、いくつかの不安要素とともに苦しい状況に追い込まれていた。

そんなチームを蘇らせたのは頼れるゴールゲッターのウーゴ・ヴィエイラと、途中から左ウイングにポジションを移していた大津祐樹だった。中町からのパスを受けた大津はすかさずニアサイドにグラウンダーのクロスを送り、走り込んだ背番号7は得意のワンタッチゴールを決める。アタッカーとしてゴールを求められる両選手のコンビネーションから、貴重な同点ゴールが生まれた。

アシストした大津は「ターンした瞬間にウーゴがあの位置に入ってくるのが分かった。見えていたのとイメージの合体」と胸を張った。アンジェ・ポステコグルー監督はクロスに対してストライカーがニアサイドに飛び込むことを徹底し、ミーティングでもFW陣に口酸っぱく言っている。

 

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決めたウーゴ・ヴィエイラは「大事な得点だったし、綺麗なゴールだったと思う」と白い歯を見せた。これぞデザインされたゴールだ。

この1点が持つ価値はとてつもなく大きかった。神戸は再び2点以上が必要となり、焦りの色を隠し切れない。さらにこの季節の14時キックオフは体力面も難しい。余裕の生まれたマリノスはようやくポゼッションで相手を崩し始める。すると神戸はパスミスや被カウンターによって体力を削り取られ、次第に疲労の色が濃くなっていく。

 終盤、間延びしてスペースが生まれたにもかかわらず2点目を奪えず、2戦2勝で終われなかったのは反省材料かもしれない。真の強者を目指すのならば、相手の戦意を喪失させる逆転ゴールが必要で、試合展開や実力を考えると勝ち切りたかった。だが、唯一にして最大の目標は『勝ち上がり』で、そこから頭の中で逆算してプレーを選択するのは仕方ない面もある。

失点に動揺することなく、スタイルを完遂したことも成長と言っていい。第1戦でのアドバンテージあってこそだが、決定機こそ作れないもののサッカーの内容を変えることなく、しっかり押し切って同点ゴールをもぎ取った。そして第1戦ではFWとして存在感を見せた大津が、今度は左ウイングで躍動。個人の評価に目を移すと、大津祐樹という新たな翼を手に入れたのが最大の収穫だ。

これでルヴァンカッププレーオフステージと天皇杯を無事に勝ち上がり、それぞれ次のステージに駒を進めた。主将の中澤佑二は「最低限の結果を出せた」と胸を撫で下ろした。安堵と笑顔で中断期間を迎えられるのは素直に喜ばしい。

 

 

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