「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

抜群の存在感を発揮した昨夏以降のように、今年も扇原貴宏の夏から目が離せそうにない [扇原貴宏 ピックアップコラム]

 

 

重心を低く落とし、左足をシャープに振り抜く。インパクトされたボールは美しいアーチを描き、数十メートル先で待つ味方にピタリと収まる。局面を大きく変えるロングパスは、サポーターから感嘆の息を誘ってやまない。

ここまでのリーグ戦15試合中13試合に出場。中盤の一角として地位を確立している。加入2年目の今季も、扇原貴宏に対する期待値はとても高い。

しかしながら、周囲の後押しに応えきれているとは言い難い。他ならぬ本人が一番分かっている。

「キー坊(喜田拓也)がケガをしてチャンスが回ってきた中で、難しい試合や場面が多かった。自分が入っている位置は、守備のことを考えつつ攻撃でも重要なポジション。ある程度試合に出ていたのに、チームを勝たせられなかった責任を感じる。もっと自分のパフォーマンスが良かったら…」

 開幕戦・セレッソ大阪戦と第2節・柏レイソル戦でベンチを温めるのみだった扇原は、つづくサガン鳥栖戦で今季初出場のチャンスを得る。だがミス絡みで失点すると、最後まで主導権を握れないまま1-2で敗戦。「今日は自分たちのサッカーが一番できなかった試合。もっと勇気を持ってやらないといけなかった」と首を横に振り、反省の弁を口にした。

その後、背番号6は前半戦最後の第15節・V・ファーレン長崎戦までの全試合でピッチに立ち、中盤の底で奮闘した。喜田不在の状況下でチームはワンボランチとダブルボランチを使い分け、中町公祐や天野純とコンビを組み、吉尾海夏や山田康太が中盤の一角として頭角を現す。それでも、どんな時も扇原が中盤を下支えしている事実は変わらなかった。

4勝5分6敗で13位に低迷しているここまでを振り返り、悔しさをにじませながらも前を向いた。

「もったいない前半戦だった。ちょっとしたことが原因で勝ち点を落としている試合が多かったので、それさえなければ…。そういったところから自信を失ってしまった部分もあったと思う。でも新しいサッカーにチャレンジなので、この苦しみが後半戦につながるはず」

 

 

ポジションは変わらず、求められる役割も他のポジションに比べれば大きな違いはないように見える。でも、なぜ力を発揮し切れていないのか。変わったのはチームの戦い方であり、スタイルだった。

昨季までのマリノスは伝統の堅守をベースに、常に脇を締めるサッカーを実践していた。失点を少なくすることが勝利と勝ち点への近道という共通認識があった。新加入選手も守備意識の高さを肌で感じ、トリコロール色へ徐々に染まっていく。昨季で言えば扇原だけでなく松原健や山中亮輔も同じように、それまでのサッカー観と異なる異文化に触れ、時間をかけて吸収していった。

 

 

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