「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ムードメーカーとしてピッチ内外で声を出し続ける金井貢史の存在は、とても貴重だ。嫌われ役を厭わないからこそ、味方にも遠慮せず強い口調でモノを申せる [十日町キャンプレポート3日目]

 

 

グラウンドの空気がピンと張り詰めたのは、キャンプ3日目午前練習の終盤だった。ピッチの縦幅と横幅を少しずつ狭めた状態で11対11のゲーム形式を行っている最中、大きな声がピッチの外まで聞こえてきた。金井貢史が同じ組のオリヴィエ・ブマルに強い口調で何か言っている。

主力組の左ウイングに入っていたブマルは、ボールロストした直後の守備への切り替えが遅れがちなタイプで、実際のゲーム中でもそういったシーンが何度か続いた。ブマルの後方にいる左サイドバック・山中亮輔が守備への戻りを求めても、なかなか対応できない。その様子を見かねた金井が、大きなジェスチャーを交えながらブマルに守備への切り替えを要求していたのである。

 

 

紅白戦形式が終わってからもヒートアップする両者は、給水しながら声を荒げる場面も。その後、仕上げとしてゴール前のシチュエーションに特化した2対1や2対2で体をいじめ抜き、午前練習は約2時間で終了。選手たちがそれぞれロッカールームや自主練習に向かう中、アンジェ・ポステコグルー監督が金井とブマルを呼び、通訳を介して何やら話を始めた。例の件であることは容易に想像がつく。

 

 

 

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ムードメーカーとしてピッチ内外で声を出し続ける金井の存在は、とても貴重だ。嫌われ役を厭わないからこそ、味方にも遠慮せず強い口調でモノを申せる。あの場面で金井がブマルに要求したのは、簡単に言えばハードワークであり、試合に出るのならば当然のプレーと言える。それをブマルができないのなら試合には出られないだろうし、チームとして戦っている以上は、センターバックの金井が前線の選手に守備を求めるのは自然な流れである。

 

 

ただ、指揮官には両者の言動が感情的になっていると見えたのかもしれない。健全なコミュニケーションではなく、感情をぶつけるだけになっては意味がない。そしてポステコグルー監督は最後に「今後は同じことがないように」と静かに伝えたという。

誤解がないように記しておくが、両者はただフラストレーションをぶつけ合っていたわけではなく、互いのサッカー観とチームワークの狭間で主張し合っていただけ。例えば理不尽なラフプレーならば姿勢を正さなければならない。だが今回のようにピッチ内で建設的に言い合うのは悪いことではない。もともとピッチ内で静かな傾向のチームなだけに珍しい光景だが、強くなるためにお互いの要求レベルを上げる作業はとても重要だ。

午後は軽めのメニューとなり、サッカーテニスで和気あいあいと過ごした。これで十日町キャンプも折り返しを迎え、明日からは後半戦に突入する。選手は厳しいトレーニングで疲れが溜まってきている頃だが、リーグ再開後にチームとして巻き返すためにさまざまな局面で努力をしている。その一端がうかがえる日となった。

 

 

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