【サッカー人気3位】【J2箱推し宣言!】元悦放談:魔境J2…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

歯車を元に戻す [J5節 広島戦プレビュー] (藤井雅彦)

 

 

「ナビスコカップで初めて負けたのでちょっと嫌な流れになっている。これでリーグ戦でも負けるとズルズルといってしまう」

中澤佑二はそう言って気を引き締めた。自らは試合に出ていないものの、チームは水曜日のナビスコカップ第3節・大宮アルディージャ戦で今シーズン初めて黒星を喫した。舞台がリーグ戦ほどの価値を見出せないカップ戦であると頭で理解していても、なかなか割り切ることができないのが選手であり、チームだ。メンバーを総替えしているのならばそれも可能かもしれないが、少なくとも先日の大宮戦は違った。直近のリーグ戦から先発5選手を入れ替えたとはいえ、前線の軸であるマルキーニョスは出場停止明けで充電十分だった。右SBで開幕からレギュラーを務めていた小林祐三という“復帰組”も含まれていた。後半開始から中村俊輔を、残り30分で齋藤学を投入したことからも、マリノスは全力で勝ちに動いた。これらを踏まえて考えると、カップ戦だからと割り切るのは難しい。

残念ながら、開幕戦から勢いを増す一方であった好気流は、すでに消えたと見るべきだろう。ここまでの公式戦成績は6勝1敗なのだが、唯一の敗北はつい最近喫したもの。当たり前の話だが、次のゲームの重要度は増す。もしサンフレッチェ広島戦に敗れればチームは連敗となり、流れは少しずつ悪い方向に傾いてしまう。逆にここで勝利すればカップ戦に敗れた苦い記憶を払拭し、開幕からリーグ戦5連勝達成という捉え方も可能だ。どちらに転ぶかは、もちろん結果次第。天と地ほどの差がある。

一度狂った歯車を元に戻すのは非常に難しい作業となる。それは広島戦に臨むメンバー編成だけを見ても分かる。最大のトピックは水曜日のカップ戦に今季初先発した熊谷アンドリューがベンチにも入らず遠征に帯同しないという事実だ。代わってベンチ入りするボランチは小椋祥平となる。熊谷が大宮戦で見せたパフォーマンスはお世辞にも良かったとは言えないが、次の試合でベンチからも外れるとなればメンタルの浮き沈みの激しい熊谷は平常心ではいられないだろう。彼は溢れんばかりの感情を表に滲み出す小野裕二のようなタイプではない。この一連の流れでモチベーションを下げてしまうのは目に見えている。

選手起用について、もう一つ不安要素がある。大宮戦で失敗に終わった2トップではなくマルキーニョスを1トップに据えた[4-2-3-1]に戻るのは妥当として、齋藤が左MFとして初先発を飾るようなのだ。試合前日のフォーメーション練習では主力組の左MFに入っており、端戸人や佐藤優平は控え組だった。齋藤はコンディションが万全の状態ならばもちろんレギュラーとしての扱いを受けるべき選手である。いつまでもスーパーサブという位置付けで満足できるはずがなく、キレのある動きを持続できるならば当然スタメンで起用すべきだ。

問題はコンディションが本当に万全なのかという点。大宮戦ではチームが負けていたため当初の予定よりも長い30分間プレーした。そして中2日のゲームで今度は先発出場するという。齋藤の状態について樋口靖洋監督は「(状態は)上がってきていると思う。ただ、90分間持つかどうかは厳しいかもしれない」と手探りであることを暗に認めている。やはり見切り発車感は否めない。恐れるべきは体力的な問題ではなく負傷だ。齋藤は足首やひざの負傷に始まり、最近では右でん部にも違和感を訴えている。明らかに体のバランスを崩していることによる連鎖負傷であり、大けがになっていないのは不幸中の幸いなのだ。だからこそ開幕からここまで無理をさせず慎重に起用してきたのではなかったのか。

不確定要素を承知の上で齋藤を先発起用する理由は、連敗を避けるためにほかならない。指揮官のこの一戦に懸ける思いが伝わってくるのだが、それと引き換えにここまで負傷がちの選手を大切に扱ってきたことが無駄にならなければいいのだが…。久しぶりの敗戦となったのちに樋口監督は「悪い流れになったとは思っていない。いままで積み上げてきたものがなくなるわけではないし、連勝が消えるわけでもない」と強く言い切った。しかしながら起用法からは明らかな前傾姿勢を取っているように見える。リスクを負うということは、必勝を期さなければならない。もし連敗してしまえば、不安要素がさらに顔をのぞかせてしまうからだ。

試合当日、広島県付近は嵐の天候になるという。雨だけでなく風も強く吹き荒れ、まともにサッカーができる環境ではないかもしれない。正直にパスをつなぐことが得策とは限らない。「どっちがどれだけ環境に適応できるか。その場の状況に応じたサッカーをできるチームが強いチーム」(兵藤慎剛)。場面によっては自分たちのスタイルを一時的に放棄しても勝ち点3を目指さなければならない。

2連敗だけは避けなければいけない。必要なのは勢いではなく地力だ。マリノスにはそういった気概の見える戦いを期待したい。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ