「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

岐路に立たされているマリノスは、5日のフロンターレ戦で正念場を迎える [J19節 広島戦レビュー]

 

ほんの少しの出来事ですう勢がガラリと変わるのがサッカーで、それがプラスに働く試合があれば、サンフレッチェ広島戦のように致命傷になる場合もある。

直接的な敗因は、失点した経緯と時間帯だろう。前半終了間際、相手のクロスが懸命にブロックした仲川輝人に当たり、これがPKの判定に。ボールは肘にヒットしているのだから、厳しいとはいえ間違った判定とは言えない。

 次のシーンで、青山敏弘のPKを飯倉大樹がファインセーブ。しかしキッカーが一度止まるフリをしたフェイントに対し、飯倉は先に前へ出てしまった。飯倉自身が「自分的にも出たと思ったので、そこはレフェリーのさじ加減かなと思う」と述べているとおりである。

失点するまでの時間帯については、多くの選手が手ごたえを感じていた。ピッチ上の11人がフレキシブルなポジションを取り、ボールもよく動いていた印象はたしかにある。だが肝心の広島の選手を動かすことはできていなかった。縦と横のスライドを徹底しながら4-4-2でバランス良く守る広島の組織を、崩し切れなかった。

後半立ち上がりの2失点で試合は決した。ここまでリーグトップの得点数を上げていても、3~4点のビハインドをはね返すのは容易な作業ではない。リーグ再開後は大勝と大敗を繰り返しているが、結果として大敗のほうが多くなってはまずい。モチベーションとテンションを保つのが難しくなる。

試合後、アンジェ・ポステコグルーは少し語気を強めて言った。

 

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「全体を通して指導のやり方や戦い方を変えるつもりはない。もっとディフェンシブになるということはないし、今のサッカーを極めていきたい。もちろん責任はすべて自分にある」

現実路線への方向転換ではなく、今のスタイルを突き詰め、さらにブラッシュアップしていくという宣言だ。大量失点による大敗が続いても、我らがボスはまったくブレない。その姿勢にはあらためて感服させられる。

 でもスタイルを追求するだけで結果が出なくてもいいわけではない。勝つための手段と目的を間違ってはいけない。個人的には、どんな形でも内容でも勝利が必要な時期に差し掛かっていると感じる。筆者が知っているマリノスは、こういった苦境に立たされた時に地力を発揮する強いチームだ。クラブの伝統や価値と言ってもいい。

それが今、試されている。その状況において川崎フロンターレは格好の相手。以前であれば劣勢が想定されながらも、勝負強く競り勝てた。では今年はどうか。これまでのように守備能力のある選手が少なく、それ以上に守備意識の低下が由々しき問題になっている。いささか不安が先に来る。

トリコロールが地力を発揮する場面は、いつだって守備力が最大の活力だった。ボスの就任によって、その歴史が覆るのか。岐路に立たされているマリノスは、5日のフロンターレ戦で正念場を迎える。

 

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