0‐7の処方箋(J論)

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「オレのセーブが勝つためのファクターになった」守護神 飯倉なくして、マリノスの勝利はなかった。流れを引き戻したビッグセーブ [J27節 磐田戦レビュー]

 

スタイルやクオリティと関係なく、とにかくパッション濃い90分間だった。浦和レッズ戦で喫した黒星に気落ちすることなく、全員が持てる力を振り絞った。その末に手にした勝利は、勝ち点3以上の価値がある。

決勝点は終盤の86分。ドゥシャンからの横パスを受けた山中亮輔は落ち着いてボールを止めた後、ひと呼吸置いて左足を振り抜く。

「かなりフリーなのは分かっていたし、トラップしてからもだいぶ余裕があった。あのコースに流し込めたのは良かった」

 抜群の攻撃性能を持つ金髪左サイドバックにとって“流し込む”という表現に該当する鋭いシュートは、相手GKの手前でバウンドし、カミンスキーの指先をかすめてゴールネットを揺らす。背番号24は喜びを爆発させながら、ベンチ方向へ。勝ち点3を大きく手繰り寄せるゴールで、マリノスに関わる者全員に歓喜をもたらした。

開始8分に遠藤渓太のゴールで幸先よく先制し、その後もチャンスを作り続けた。ボールポゼッションこそ普段より低い数字なのは、相手の高いラインを突く長いボールが増えたから。ゴールを目指すための最善策なのだから否定する必要はないだろう。しかし決め切れない。不穏な空気が流れ始め、後半に入って勢いを強めたジュビロ磐田のクロス攻勢から同点ゴールを許し、危うい展開になりかけた。

その流れを引き戻したのはGK飯倉大樹のビッグセーブだった。

 

 

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巧みなコンビネーションで中央突破してフリーになったシューターの大久保嘉人に対し、素早く間合いを詰め、最後まで目線を切らさず、そして倒れない。次の瞬間、ファーサイドを狙われたシュートを見事にセーブして危機を救い、再び勝ち点3へのチャンスをもたらした。「浦和戦でも相手と1対1になるシーンはあった。今日はいい結果になったからオレのセーブが勝つためのファクターになった」と涼しい顔で話す守護神なくして、マリノスの勝利はなかった。

指揮官のマネジメントにも触れないわけにはいかない。前節終了後は記者会見で少し暑くなる素振りを見せ、週中の練習後もメンタル面を強調していた。一方で、浦和戦の内容については「この前は勝つべき試合だったと思うし、内容に関しては良かったと思うし、満足している」と話し、その言葉通りの編成でジュビロ磐田戦に臨んだ。

実戦形式の練習を最小限にとどめた結果、プレーする選手にすら先発が見えにくい状況となったが、蓋を開けてみれば浦和戦からの先発変更は一人だけ。その一人も累積警告で出場停止だった松原健の復帰なので、実質的には前節のスタメンに手を加えなかったと言っていい。マリノスのサッカーと選手を信じ、必要以上に手を加えなかった采配が吉と出た。

大きな1勝を手にした。勝って反省できるのは、何にも勝る好材料である。だからこそ、次節・ベガルタ仙台戦の重要度がさらに増す。磐田戦を上昇気流の基準点として、最も重要な残り7試合に向かう。

 

tags: 飯倉大樹

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