【サッカー人気1位】勝ったチームとしての意思疎通 伊藤敦樹…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マルキーニョスはベンチスタート [J9節 鹿島戦 プレビュー] (藤井雅彦)

 

まずは嬉しいニュースから。4月上旬に『心外膜炎』を患い、横浜市内の病院に入院していた飯倉大樹が5月1日に無事に退院した。翌2日にはクラブハウスを訪れ、元気な笑顔を見せた。ここ数年は筋力アップを目標に掲げて日に日にたくましい体つきになっていたが、どうやら少しスリムになって帰ってきたようだ。それについて「モデルみたいになった」と彼らしく軽口を飛ばしていた。

入院中は選手の多くがお見舞いに足を運び、飯倉を勇気づけた。同期入団でプライベートでも親交の深い天野貴史は「最初の頃は何も食べられなかったので、食べやすいゼリーをたくさん買っていった」と振り返る。病室で退屈する飯倉のためにDVDをプレゼントした選手は数え切れず、兵藤慎剛はミネラルウォーターをダンボールごと持っていって喜ばせた。選手全員が飯倉を思いやり、それぞれに自発的なアクションを起こした。それはサポーターも同じで、アウェイながら新潟の地で最初に掲げられた横断幕は涙なしに見ていられなかった。本格的な復帰にはもう少し時間を要するだろうが、まずは大切な仲間が帰還したことを喜びたい。

同じポジションの選手の話をもう一つ。5月2日、榎本哲也が30歳の誕生日を迎えた。今季は開幕からリーグ戦全試合に先発フル出場しており、心身ともに充実していることが明るい表情からうかがえる。プライベートでは二人の女の子のパパとして多忙な日々を送っているが、子どもの話をする榎本はいつも笑顔だ。節目の30歳になったわけだが、ポジションの性質を考えてもこの先のキャリアは長いはず。失礼ながら「サッカーキャリアの終わりは見えてきた?」という質問をすると、彼は「まだまだ見えないよ。明日の試合しか見えていない」と真剣な目で話す。ちなみに誕生日プレゼントは完封よりも勝利が欲しいとのこと。

先日のナビスコカップ第5節・湘南ベルマーレ戦で今季初出場ながら完封勝利の立役者となった六反勇治、それと現在リハビリ中の鈴木椋大を含めたGK陣は胸を張って他チームに自慢できる陣容だ。彼らが切磋琢磨することでマリノスの守備には一層磨きがかかる。今季ここまでは得点力ばかり注目される展開となっているが、長いシーズンで守護神の活躍が必要になる試合は必ずやってくる。そのとき誰がゴールマウスを守っていても、勇猛果敢に体を張ってくれるだろう。だから安心だ。

もちろんGK陣の活躍だけでは勝てない。勝利には最低でも1得点が必要で、明日の鹿島アントラーズ戦では前節のゲームで右ひざ裏に違和感を訴えたマルキーニョスがおそらくベンチスタートとなる。試合前日の段階で強烈なシュートを放っていることから大事には至らなかった模様だが、ここでリスクを冒して長期離脱になるのだけは避けなければいけない。マルキーニョスはもちろん先発で試合に出たいだろうが、ここはひとまずベンチに座ってもらい、古巣を睨みつけていてもらおうではないか。絶対的ストライカーがベンチに控えているのは心強い限りだ。

マルキーニョスの代わりにスタートで1トップに入るのは藤田祥史となる。どうしても出場機会が限られてしまうが、マルキーニョスの出場停止によって出番を得たFC東京戦では見事な2得点でチームを勝利へと導いた。サイドからのクロスに対してニアサイドに走り込む能力はレギュラーFW以上のものがある。藤田自身も「もっとサイドからのボールを要求していきたい」と意気込んでおり、両SBのドゥトラと小林祐三には積極的なニアサイドへのボールを期待したい。

対戦相手の鹿島は開幕前、浦和レッズとともに優勝候補の筆頭に挙げられていた。最も恐れるべきは新加入のFWダヴィでも、左MFとして輝きを取り戻しているジュニーニョでもなく、鹿島の根っこに存在する勝利への欲だ。象徴的な存在は小笠原満男になるのかもしれない。彼を筆頭に、鹿島は貪欲に勝ち点3を狙ってくる。筆者は鹿島が諦めた瞬間を見たことがない。それこそが強さの源であろう。樋口靖洋監督の言葉を借りると「決め手を持っている」となる。その決め手はおそらく精神力である。確かに抽象的だが、鹿島を形容するのにサッカー用語は不似合いだ。だからこそ、鹿島はいついかなるときも厄介な敵となる。

苦戦は避けられないだろう。拮抗した展開で問われるのは地力と精神力で、その点において鹿島はリーグで最も優れている。サッカーの観点で言えば、マリノス同様にセットプレーにストロングポイントを持っていることも大きい。マリノスがそうであるように、しばしば飛び道具で決着をつけてきた歴史を彼らは持っている。不要なファウルは命取りとなる。それは必要以上にロングスローを与えて同点弾を喫した前節の教訓でもある。

近年ないほどの好スタートを切ったのだから、その勢いを次へつなげなければならない。鹿島戦を皮切りに柏レイソル、名古屋グランパス、ベガルタ仙台と「勝ち方を知っているチームとの対戦が続く」(樋口監督)。ここからの戦いが今シーズンの分水嶺だ。その初戦が最も重要なのは言うまでもない。

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