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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

一本のパスに意味と狙いを込める左サイドバックが、マリノスを離れる [下平匠、市原・千葉へ完全移籍]

 

 

一本のパスに意味と狙いを込める左サイドバックが、マリノスを離れる。

21日、DF下平匠(30)がジェフユナイテッド市原・千葉へ完全移籍することが発表された。

下平は2007年にガンバ大阪でプロキャリアをスタートさせ、大宮アルディージャを経て14年にマリノスに加入。15年にはリーグ戦フルタイム出場を果たすなど主力として地位を確立。だが今季は出場機会に恵まれず8月に千葉へ期限付き移籍していた。

16年途中からは負傷に頭を悩ませる時期もあったが、昨年末の活躍は記憶に新しいところ。チームの緊急事態に慣れない右サイドバックでも奮闘し、本来の左サイドバックに戻った天皇杯準決勝と決勝では伊藤翔とホットラインを築いてゴールをお膳立てした。

そして今年は、下平匠が本格的に復活するシーズンになるはずだった。

山中亮輔が負傷で出遅れていた沖縄キャンプでキレのある動きを見せ、宮崎キャンプ途中から採用されたサイドバックがインサイド寄りにポジションを取る戦術との相性も悪くない。FC東京とのプレシーズンマッチの翌日に行われた練習試合では、経験値とサッカーセンスの高さを存分に発揮。開幕スタメンこそ山中に譲ったものの、静かに牙を研いで待っていた。

しかしリーグ戦でチャンスが与えられることは一度としてなかった。

 

 

シーズン開幕当初、チームはハイライン&ハイプレスを実行。マリノスのサッカーは間違いなく特徴的で、尖っていた。アンジェ・ポステコグルー監督は最終ラインの選手に反転スピードやアジリティ、そして走力を求め、ファーストチョイスは山中だった。

 

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惜しむらくは、5月に入った頃にはハイラインではなくなったこと。最終ラインは通常の高さに設定され、GK飯倉大樹は話題をさらった高い位置取りをやめた。良くも悪くもバランスを取りながら戦うようになった結果、尖った部分はかなり丸まった。

ただ下平の起用法が見直されることはなかった。山中を一列上げる起用法を試すこともなく、ポステコグルーはそもそも下平を戦力として考えていなかった。

選手起用は監督の専権事項である。『好き嫌い』という表現はあまりに稚拙だが、どの世界のどの監督にも、は気に入りの選手は存在するもの。一方で、どれだけ実力があっても起用されない選手もいる。いずれもサッカーの世界ではよくあること。まったくもって珍しい話ではない。

 

 

レギュラーとして試合に出場し続け、11月に日本代表初キャップを刻んだ山中は常々言っていた。

「自分はレギュラーだと思っていない。匠くんの存在が怖い。油断していたらポジションを奪われて、試合に出られなくなってしまう」

下平の存在が危機感につながり、山中は素晴らしい成長を遂げた。結果を残し続けてレギュラーの座を守った。チーム内で最もハイレベルな競争は、最終ラインの左サイドにあった。

10月に30歳になったばかり。老け込む年齢ではなく、むしろサッカー選手として脂ののっている時期である。相手のプレッシャーに動じることなくヘッドアップし、さらにプレーを直前で変えられる。お世辞抜きにトラップ&パスが日本一上手い左サイドバックは下平だろう。

在籍した5年間の取材で、印象に残っている言葉がある。

「みんながしっかりパスコースに顔を出していけば、綺麗に最後まで崩せるはずやから」

下平には圧倒的なフィジカルコンタクトも、スプリント能力も、シュート力もない。でも誰にも負けない正確な技術と判断力がある。パスサッカーの潤滑油となる左サイドのゲームメーカーだ。

その能力がポゼッションサッカーでゴールを目指すマリノスで生かされなかったことが、無念でならない。

 

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