「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝ち点3の余韻とともに約1ヵ月を過ごしたい [J13節 鳥栖戦プレビュー](藤井雅彦) -1,718文字-

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3月2日のJリーグ開幕戦から数えること公式戦20試合目を迎える。リーグ戦での開幕6連勝というクラブ新記録で開幕ダッシュに成功したマリノスは、現在も2位の好順位をキープしている。樋口靖洋監督はここまでの戦いに概ね納得の表情を見せ、こう話した。

「ナビスコカップも終わってみれば5勝1敗という成績だった。ここまで公式戦を19試合戦って12勝していることになる。去年は引き分けが多かったが今年は勝ちきれている」

昨シーズン序盤とは明らかに異なる戦いぶりだが、シーズン中盤以降の安定感や終盤の力強さを思えば予想外の躍進ではない。ここまで安定した力を発揮して接戦を勝ち切れたのは想像以上だが、少なくとも新しく立ち上げたチームではない。新シーズンを迎えるにあたって新監督を招聘したチームや新戦術、新システムにトライしたチームよりも確実に一歩先を行っていた。最も胸を張っているのはおそらく嘉悦朗社長だろう。

いわば当たり前の好成績とも言える。これまでも述べてきたように、勝利をもぎ取ってきたチームは総じて状態の悪いチーム、あるいは力が劣るチームだ。現在順位を見ても明らかである。逆に5月に入ってリーグ戦での成績が伸びていないのは自分たちよりも対戦相手に理由があると見るべきだ。相手のレベルが上がれば理想とするサッカーを追い求めるのは難しい。

では次に対峙する鳥栖をどのランクのチームに位置付けるべきか。昨シーズンの鳥栖はJ1昇格1年目ながらアグレッシブな姿勢を貫いた。ハイボールを上手に使うスタイルの象徴が得点源の豊田陽平で、ハードワークを厭わない姿勢で快進撃を演じた。マリノスも痛い目に遭っており、アウェイで対戦した昨シーズンの第3節は0-1で敗れている。「相手の土俵に上がってしまった」と樋口監督が苦い記憶を口にすれば、中澤佑二は「肉弾戦に持ち込まれて負けた」と回想する。今シーズンは明らかにリズムをつかめていない様子だが、それでも鳥栖ペースになると苦しい戦いを余儀なくされる。

不安要素の一つに連戦による疲労が挙げられる。メンバーを固定してナビスコカップを戦ってきた代償を払う展開は避けたいところ。水曜日の清水エスパルス戦は相手の不調もあってラクな90分間を過ごしたことで選手たちの表情は明るい。しかし連続するアウェイへの移動も含めて見えないところにダメージが残っているはず。ベガルタ仙台戦がそうだったように、前半はスローなスタートになるかもしれない。
それが意図的なものであれば問題ない。「90分間で戦うのがサッカー」と富澤清太郎。序盤は慌てることなくゲームを進め、勝負所でギアを上げる。富澤と中町公祐のダブルボランチはゲームコントロール能力に長け、その前方に位置する中村俊輔も圧倒的な経験値でゲームの流れを読める。序盤に後手を踏んだとしても、両CBとGK六反勇治を中心に耐えることで視界は開けるはずだ。

このゲームが終わると約1ヵ月後のナビスコカップ準々決勝まで公式戦は組まれていない。その間に26歳以下の選手は韓国遠征を行い、オフを挟んだのちにチーム全体で新潟十日町キャンプを実施する。まずはコンディションを整え、夏場に向けてチームをさらにブラッシュアップする時間である。下位に沈んでいるチームは立て直す時間に充てるのだろう。

これは公式戦と少しの間お別れしなければいけないことを意味する。好調時は次の試合がやってくるのが待ち遠しいもので、ブレイクを挟むことで流れは一旦リセットされる。リーグ序盤をけん引したのは現在首位の大宮アルディージャとマリノスだ。実力がフロックではなくホンモノであると証明するために、勝ち点3を手に入れたい。その余韻とともに約1ヵ月を過ごしたいものだ。

 

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