「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

最も戦いたくなかった相手との正念場 [ナビスコ準々決勝 鹿島戦プレビュー] (藤井雅彦) -2,028文字-

20130613_172203 5月25日のJ1第13節・サガン鳥栖戦以来、約1ヵ月ぶりの公式戦を迎えようとしている。世間は日本代表モードかもしれないが、ついにスポットライトを浴びる日が帰ってきた。明日に控える試合はナビスコカップ準々決勝1stレグで、対戦相手は前年度王者の鹿島アントラーズだ。

「トーナメントの鹿島」。対戦相手について問われた樋口靖洋監督はヨコハマ・エクスプレスの単独インタビューにこう答えている。長丁場のリーグ戦でも安定した力を発揮するが、一発勝負のトーナメントでは抜け目なさがより際立つ。「鹿島は勝ち癖がついている」(中村俊輔)。予選リーグを勝ち上がったほかの3チームにACL出場の4チームを合わせた7チームの中で、最も戦いたくなかった部類の相手と言えるだろう。

4-2-3-1_2013下 5月上旬に行われたリーグ戦での対戦が分かりやすい指針となる。そのゲームでは「どっちつかずの試合」(樋口監督)で、主導権の所在が見えにくい内容だった。得点場面だけを切り取っても、先制点となった野沢拓也のゴールはセットプレーからのこぼれ球を見事なボレーシュートで決めた形。対してマリノスの同点ゴールも、終盤に投入されたファビオがセットプレーのこぼれ球を神懸かり的に押し込んだ形だった。

今回の対戦でも主導権を争う攻防が繰り広げられるはずだ。力が拮抗し、さらにベテランが数多くいるカードだけに「渋い展開」(富澤清太郎)になりがち。スコアレスのまま気がつけば時間だけが経過しているという展開も珍しくない。今回はホーム&アウェイの2戦トータルで勝敗を決めるわけだから、第1戦が慎重な展開になったとしても驚きはない。

紛れる要素があるとすれば、それは互いに久しぶりの公式戦だということ。マリノスは十日町キャンプで練習試合を2試合行ったが、いずれも明らかな格下で参考にならない。鹿島は中断期間中に宮崎キャンプを実施したが、そこではフィジカル中心のメニューで、練習試合は行わなかったという。試合勘の欠如は両チームに共通して言えることである。すると試合の入りが落ち着かない可能性も十分にある。不意を突くようにファーストプレーでどちらかのゴールネットが揺れ、続けざまに逆サイドにもゴールが決まる。拮抗して膠着するかと思いきや乱打戦になる可能性もあるのではないか。いずれにしても久々の公式戦は蓋を開けてみるまでは展開が読みにくい。

 

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4-4-2鹿島 間違いなく言えるのは月並みではあるが「セットプレーが大事になる」という中村俊輔の言葉だ。これまでこぼれ球も含めてセットプレーから数多くの得点を記録している両チームで、その威力は時として強固な守備を上回る。そこに久しぶりの試合という不確定要素が加われば、集中を欠いた場合にはすぐにやられてしまうだろう。序盤から目が離せない試合となる。

その試合に臨むメンバーは栗原勇蔵を日本代表で欠くほかはベストメンバーでの編成となる。栗原の代役はもちろんファビオだ。ナビスコカップの予選リーグ、あるいは中断直前の鳥栖戦で高いパフォーマンスを見せていたファビオに不安はない。試合前々日の紅白戦では打点の高いヘディングでゴールも決めていた。鹿島戦との相性の良さがあるとすれば、この一戦でも貴重なゴールを期待できるかもしれない。

ファビオ以外の10人に関してはこれまでの主力という括りで間違いない。中断前は負傷がちだった齋藤学だが、韓国遠征と十日町キャンプを意欲的に消化。特にシュート練習に時間を割いており、フィニッシュにこだわりを見せている。練習したからといってすぐに精度が上がるとは思わないが、反復練習することで神経が研ぎ澄まされる。何よりも、いまの齋藤にはやってくれそうな雰囲気が漂う。おおいに期待していいだろう。

キャンプレポートでも記述したように、中断期間中にチームは『三冠』に向けて士気を高めている。その可能性を残しているのは18チーム中8チームだけ。三冠を達成するために、まず最初のタイトルはおそらくナビスコカップとなる。現在はまだ準々決勝という段階ではあるが、ここで前年度王者と激突するのだから、いきなりの正念場と言ってもいい。

中断期間を経て、マリノスは再出発する。目標はトーナメントの頂なのだから、そのためには鹿島という難関を通過点にしなければならない。

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