「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「マリノスとレッズだけで引退していたら、指導者になるための経験が足りなかったかもしれない。『ずっとJ1でやってきた』が良いコーチになる理由とは限らない」 [榎本哲也インタビュー]

 

 

榎本哲也インタビュー(前編)

インタビュー・文:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 

かつて横浜F・マリノスに在籍した選手の引退後にスポットライトを当てるこの企画。

今回は、ガンバ大阪との開幕戦で日産スタジアムを訪れた榎本哲也にインタビューを行った。

前編では、キャリア晩年をどんな思いで過ごし、その経験がセカンドキャリアにどのような影響を与えたのかを掘り下げていく。

トリコロールの血が流れる守護神は、早くも一歩引いた位置から冷静な視点でサッカー選手を見ているようだ。

 

 

――2月7日に現役引退を発表しました。今の率直な心境から聞かせてください。

「体を動かさないのは不思議な感じ。『いいのかな?』って、たまにソワソワします(笑)そう言った時にサッカー選手ではなくなったことを実感します。引退後、しばらくプロ生活に未練を感じる人もいるみたいだけど、今のところ自分にそういう気持ちはなくて、清々しい気持ちです。後悔もありません」

 

――素朴な疑問です。引退後はどんな毎日を過ごしているのですか?

「今のところは家にいます(笑)。現役生活中はなかなかできなかったことをやっていますね。家事もそうだし、育児も。自分の場合は直近の1年間が単身赴任だったこともあって、家で家族と過ごす時間を大事にしています」

 

 

 

――カターレ富山でのプレーが現役ラストという形になりました。

「加入した当初から『ここでプレーするのは1年だけ』と公言していました。だからこそ本当は結果を残したかった。J2昇格を本気で狙っていたけれど、残念ながら力が及びませんでした。それも自分の中では引退の理由のひとつになっています」

 

――単身赴任だったようですね。

「それは辛かった(笑)。特に、食事など栄養面の管理が難しかったです。僕は選手寮に住んでいたので、朝食と昼食は提供してもらえました。でも夜は外食が多くて、若い選手を連れて一緒に食べることもあったけれど、どうしても選択肢は限られてきてしまう。20代前半の若者ではないので野菜や魚をバランス良く食べたいけど、それができなくて体が重くなってきた気がして…。それでスーパーに駆け込んで大きな鍋を買って、野菜と鶏肉を入れた鍋料理を作りました(笑)。食事の重要性を身に染みて感じました。今までももちろん分かっていたけれど、そういったサポートは嫁さんがすべてやってくれていたので苦労を知らなかったんですよね。感謝の気持ちとともに、アスリートにとって食事がとても大切なことだと理解できました」

 

 

 

――自宅には定期的に帰ってきていたのですか?

「基本的には毎週帰ってきていました。寮に住んでいるとオンとオフが難しくて。休みの日にどこか出掛けたとしても帰ってくるのは選手寮なので、練習場と変わらない気持ちになってしまう。だから自宅に戻ってパワーをチャージしていました。試合翌日はリカバリーで、その次の日はオフだったので、新幹線か飛行機で帰ってきて自宅に1泊するという流れです。それをやらないと気持ちの面が持たなかったと思います」

 

――マリノスや浦和レッズと比べた時、どうしても環境は違うのかなと。

「もちろん違います。

 

 

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