「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

負った傷を回復するため良薬は勝つことだけ [J1第19節・湘南戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,761文字-

後味悪く終わった柏レイソル戦のあとだからこそ、絶対に勝ち点3を奪取しなければならない。先月途中、マリノスは連戦の初戦で大分トリニータと引き分け、2戦目でセレッソ大阪に敗れた。その苦い記憶を新しく塗り替えたのは上位に位置していた大宮アルディージャ、そして浦和レッズに連勝を飾れたから。悪い結果を忘れ、帳消しにするには良い結果で取り返すしかない。

4-2-3-1_best それなのにチームを取り巻く空気がどこか弛緩している気がしてならない。連日のうだるような暑さのせいか、それとも8月に入って世間が夏休み本番を迎えたという雰囲気に流されているのか。もちろんこの時期の中2日のトレーニングに軽快な動きなど期待できないが、それにしても試合前日のピッチからは覇気が感じられなかった。シュート練習を行なっても、どことなく静けさと気怠さが漂う。あくまでピッチサイドから感じる抽象的な雰囲気でしかなく、『あれは気のせいだった』と好結果のあとに思いたい。

仮に気のせいではなかったとしたら、理由の一つに対戦相手が挙げられるだろう。昨シーズンと比較して取りこぼしが減ったとはいえ、すべてを勝ちきっているわけではない。例えばヴァンフォーレ甲府や大分トリニータから勝ち点2を取り損ねている。そういった試合の反省として、相手のペースに合わせて自分たちの良さを出せずに終わった点が挙げられる。逆に上位との対戦や負けられない瀬戸際の一戦では無類の強さを発揮する。マリノスはそういった性質のチームだ。

湘南ベルマーレとは今季すでに2度対戦し、いずれも勝利を収めている。最初の対戦はリーグ開幕となった第1節で、先制しながら逆転を許し、再逆転で勝利を収めた。得点はともかく失点は「湘南の形」(樋口靖洋監督)であったことを忘れてはならない。最終ラインの背後にスペースを作れば、再びキリノの餌食になる可能性も否定できない。あれ以来、キリノにゴールがない事実はなんとも不気味だ。

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3-4-2-1湘南 次に対戦したのは4月下旬のこと。ナビスコカップ予選リーグ第5節で、アウェイでの雨中のゲームをマルキーニョスのヘディング一撃で1-0と勝利した。この試合はリーグ開幕戦以上に力の差を見せつけた感がある。攻守両面に圧倒し、湘南にチャンスらしいチャンスを与えなかった。結果こそ最少得点差だが、組織としても個人としてもマリノスの完勝と言える内容だった。

どこか緩んでいるように感じる雰囲気の背景に、過去に2連勝していることによる油断があるとしたら、それは危険だ。「いまのJリーグに簡単に勝てる相手はいない」(樋口監督)。湘南とは少なからず力量差があるだろうが、前記したように同じ昇格組の甲府や大分に引き分けるという失態もあった。ほんの少しの出来事で流れが一変し、結果も正反対となる。サッカーには往々にして起こる事態だろう。

と、ここまで警鐘としての言葉を並べてきた筆者も、湘南と10回対戦すれば8~9回は勝つと客観的に推測する。何かアクシデントがなければ足元をすくわれる危険性は低い。ただ、明日アクシデントが起きないとも限らない。柏戦でのセットプレーからの失点は事故やアクシデントで片付けてはいけないが、例えば負傷や退場は想定できないアクシデントに属する。心配が杞憂に終わればいいのだが…。

繰り返しになるが、柏戦で負った傷を回復するため良薬は勝つことだけ。湘南の勢いに屈せず、老獪なゲーム運びで差をつけたい。マリノスが普段着のサッカーを90分間貫ければ、結果はおのずとついてくるはずだ。背伸びすることなく、柏戦と同じように冷静に戦えば問題ないだろう。

 

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