「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

やるべきことはやった。少なくともこの日のマリノスは勝ち点3にふさわしい [J1第19節・湘南戦レビュー] (藤井雅彦) -1,502文字-

まずは何事もなく試合に勝ったことを喜びたい。日本代表・齋藤学は右足首を痛めて途中交代したが、大事には至っていない。ドゥトラは通算3枚目の警告を受けたものの、無事に誕生日前日の次節・サガン鳥栖戦に出場できる。クラブのレジェンドである松田直樹さんの命日付近のゲームは過去2年とも勝てなかったが、この日は格下からきっちり勝ち点3を得た。

4-2-3-1_best 開幕戦での2失点以来、大の苦手としているキリノのドリブル突破から同点ゴールを許した時点では明らかに雲行きが怪しかった。ほぼフリーの状態で前を向いたキリノの突破には前半から手を焼き、後半に入るとそれをきっかけに失点した。57分、キリノが右サイドを単独突破し、左足シュートを放つと、これが右ポストを直撃。リフレクションボールを途中出場の梶川諒太に決められて同点とされた。

試合全体の内容で劣っていたわけではない。ただし年齢的に若く、前への勢いのある湘南と対峙した場合、同じスタンスで打ち合ったときにどうしても「オープンな展開になる」(中町公祐)。すると相手が誇る前への推進力が際立ち、危険な場面に晒されてしまう。そうなってもマリノスはマルキーニョスや齋藤らの個の能力を生かして攻めることができるが、どうしても相手の良さを出させる展開になってしまう。リスクは否めない。

このような相手に対しては、やはりクローズな展開に持ち込むのがベストだろう。失点後の64分にマルキーニョスがPKで勝ち越し点を挙げてからはそういったゲーム運びができていた。勝ち越し直後の66分に高山薫に際どいボレーシュートを許したが、それも榎本哲也のファインセーブによって事なきを得る。ゲーム全体をコントロールし、逆にカウンターからゴールを狙う。ピンチらしいピンチもなく、試合終了のホイッスルを聴くことができた。

下バナー

3-4-2-1湘南 前節・柏レイソル戦との違いはとても大きい。柏戦では試合終了間際にまさかの失点を喫し、勝ち点3のはずが勝ち点1へと格落ちした。この日は一時は同点に追いつかれたが、その後にきっちり勝ち越し点を決めた。「内容を悩むのは勝ってからにしたい。勝っているけど内容が悪いなという悩みを作りたい。内容がいいけど勝てないのはダメ」と栗原勇蔵は試合を総括した。この日の内容を振り返ると決してクオリティが高かったとは思わない。それでも勝ち点3以上の結果はない。シーズンは折り返しており、勝ち点を積み上げることに勝る結果などない。

この日の勝利で順位は再び2位に浮上した。プレビューでも述べたように、甲府や大分に取りこぼしていたことを考えると、まずは勝ち点3を得たことに安堵したい。そして、すべての試合でパーフェクトを求めるのは酷というもの。相手あってのサッカーなのだから、その中で頭一つ抜きん出て勝ち点3を得られれば問題ない。相手のシステム変更に動じることなく、隙を突いて2ゴールを挙げた。つまり、やるべきことはやった。少なくともこの日のマリノスは勝ち点3にふさわしいチームだった。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ