「プロになってから、これだけ外で体を動かせない時間が続いたのは初めてでした。みんなに会えた時はとにかくうれしかったし、頼もしかった。公式戦が待ち遠しいです」[扇原貴宏インタビュー(前編)]
【扇原貴宏選手インタビュー(前編)】
実施日:6月8日(月)
インタビュー・文:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室
「プロになってから、これだけ外で体を動かせない時間が続いたのは初めてでした」
扇原貴宏はそう苦しい胸の内を明かす。
先の見えない毎日と戦いながら、必死に自分と向き合った。日常が大きく変わる出来事に、トリコロール戦士は何を思ったのか。
ヨコハマ・エクスプレスは7月4日のリーグ戦再開に向けて、扇原に独占インタビューを行った。
今だからこそ聞きたいキャプテンの言葉を、今週と来週の2回に分けて公開する。
――新型コロナウイルス感染拡大をうけて政府は4月7日、神奈川県を含む7都府県に緊急事態宣言を発令しました。以降、横浜F・マリノスはチームとしての活動を休止することになったわけですが、扇原選手は「STAY HOME」の時期をどのように過ごしていたのですか?
「ずっと自宅にいました。開幕直後にリーグ戦が中断になり、さらにサッカーをすることすらままならない状況になってしまった。世界中が向き合うべき問題なので仕方ないこととはいえ、精神的なダメージがありました。だから、家にいてもなるべく考え込み過ぎないようにして過ごしていました」
――とはいえ無意識に“考えて込んでしまう”日もあったのでは?
「そうですね。いつ再開するのかな、そもそも再開できるのかな…、とか。ただ、スポーツやサッカーだけの心配をしている状況でもなかったし、世の中の生活が大きく変わって、人との距離感を考えるようになりました。家にいるという我慢や辛抱は小さなことかもしれないけど、それが周りの人を助けることになる。不要不急の外出は避けていたし、迷惑をかけるような行動には気をつけていました」
――自宅ではどのように過ごしていたのですか?
「うーん、これといったことはしていないんですよね。インターネットを活用して買い物をする、とか。例えば僕はトレーニングに必要なダンベルを買いました。あとはNetflix でドラマを視聴していました。美容院に行けなかったので、髪の毛が伸びてしまったのが悩みでした(笑)」
――扇原選手と同じような悩みを抱えていた人は多かったと思います。ほかに、例えば食事などで困ったことは?
「普段通りの食事を心がけていましたが、生活のリズムが少し変わって1日2食になってしまうような日もありました。僕の場合、もともと食が細いタイプなので、動かなくなるとさらに量を食べられなくなってしまうんです。それで2kgくらい痩せました。動かなくなったのに同じように食べて太る人のほうが多いかもしれないので、珍しいパターンかも。サッカーができなくて、心身ともに食欲が湧いてきませんでした」
――そんな中で、横浜F・マリノスはSNSを活用してファン・サポーターとの交流を積極的に行っていた印象があります。あらためて選手としての思いや感想を聞かせてください。
「選手やスタッフの発案を通して、ファン・サポーターの人の力に少しなれたかなと思いますし、あらためて素晴らしいクラブだなと感じました。ほんの少しでも勇気を与えられたのなら意味があったと思います。僕自身もそうでしたが、人と接することが極端に少なくなった状況で、少しでも笑顔になれる時間を作りたかった。何よりも選手たち自身が楽しかったですし、その笑顔がファン・サポーターを元気づけられたらいいなと思っていました。横浜F・マリノスというクラブに在籍していることを誇りに思いましたし、本当にうれしかったです」

©Y.F.M
――当たり前だったことが当たり前ではなくなり、普通に過ごせることのありがたみを感じた時間でもありました。
「本当にその通りだと思います。感染が拡大する以前は、少なくても週1回はチームメイトと一緒に外食していました。それが外出することもできなくなり、直接会うこともできなくなってしまった。サッカーができない寂しさも大きかったですが、普通の生活がなくなってしまうことがこんなに辛いとは想像していませんでした」
――チームとして行っていたWEBトレーニングでは、練習後などに選手同士で会話をしていたと聞きました。
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