「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

君臨するJリーグ トップスコアラーとの再会 [J21節・東京戦プレビュー](藤井雅彦) -1,995文字-

渡邉千真と再会を果たす。彼は現在、Jリーグのトップスコアラーに君臨し、ここまで15ゴールを叩き出している。我らがマルキーニョス(14ゴール)よりも上にいるというわけだ。いまやFC東京のエースストライカーとして地位を確立したようである。

4-2-3-1東京移籍1年目の昨シーズンはなかなか出場機会に恵まれなかった。それでも6ゴールと一定の結果を残すあたりが彼の才だろう。前を向いて左右両足ともに遜色ない強烈なシュートを放つと、ボールはゴールネットを揺らす。マリノス在籍時にも見せていたシュート能力の高さは敵として対峙した場合、脅威となる。

特に最近は無駄な力が入っていないように見える。リラックスしたシュートモーションで、強振せずにしっかりボールの芯をとらえている。樋口靖洋監督はかつての教え子の成長を感じ取っていた。
「なんと言っても得点ランキング1位ですからね。千真のゴールシーンを見ると、20メートルくらいの距離のシュートが入っている。つまりエリアから少し出たあたりからですね。前を向くと迷うことなくシュートを打っている。そういった決断力がいい」

マリノスにいた頃の渡邉は、常に迷っている印象があった。ルーキーイヤーに13ゴールを挙げて新人王を獲得しながら、周囲から絶対的な信頼を勝ち取っていたとは言い難い。シュート能力の高さは誰もが認めるところだが、そのほかに対する評価はすこぶる低かった。前線でなかなかボールが収まらず、プレスに走る動きにも無駄が多かった。身体能力の高さを生かしきれていない場面も多く、相手からすると守りやすいFWになっていた。

それが今シーズンの前半戦で対戦した際に変わっていた。「ルーズボールにも貪欲に食らいついてきた。千真は変わったと思う」と話したのは栗原勇蔵。以前のような淡白な印象が消え、常に貪欲にボールを追いかけた。ゴールはDFに当たってコースが変わるラッキーな面もあったが、それも必要な要素だろう。マルキーニョスは「彼はストライカーに欠かせない運も持っている」とコメントしている。同じ役割を担う者としてその評価はとても高いようだ。

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まずは渡邉とマリノスがどのような戦いを繰り広げるか。もちろん活躍してもらっては困るが、一方で彼らしい豪快なシュートを見たいサポーターも少なからずいるだろう。自らの意思で完全移籍していった者に遠慮は禁物とはいえ、一度はトリコロールのエンブレムを身につけた選手だ。他人ではない。マルキーニョスとのストライカー対決は純粋に楽しみだ。

その上で勝つのは当然、マリノスである。FC東京は現在7位。ポテンシャルを秘めているチームだが、どうにも最終局面で勝負弱いイメージが先行する。そういった点で中町公祐のコメントは的を射ている。

「いまのJリーグで一番JリーグっぽいチームがFC東京だと思う。みんなの技術がしっかりしていて、イメージを共有されている。前半戦で対戦したときもかなり嫌なサッカーをしてきた印象がある。それでもいまの順位にいるのには何か理由があって、おそらく隙があるからだと思う」

4-2-3-1_マルキ端戸2013その隙をいかに突くか。例えばセットプレー。前半戦で対戦したときも中村俊輔の直接FKが顔を背けた東慶悟を直撃し、軌道が変わってゴールネットに吸い込まれた。あるいはマルキーニョスの決定力を生かすのも手だ。ここまで6試合連続ゴール中の史上最強助っ人はこの試合でゴールを決めると自身の記録である7試合連続に並ぶ。最近は表情も柔らかく、ゴールという特殊技能で勝ち点3をもたらす。

そして右足首ねん挫で離脱していた齋藤学が戻ってくる。試合2日前の紅白戦にも参加し、大きな反動も出ていない。その紅白戦では1本目に端戸仁が起用され、2本目に齋藤が入った。復帰したとはいえ万全ではないため、ベンチスタートが現実的な策だろう。その場合、流れを変えるためのジョーカーとしてFC東京の間隙を突く働きが期待される。

真夏の最中に行われるゲームだ。ほんの一瞬の隙が命取りとなる。わずかな差が決定的な違いを生み、勝敗を分ける要素となるだろう。ピッチで戦う11人だけでなく、ベンチに控える7人、そして采配を振るう指揮官のアクション、そのすべてが首位獲りへの一歩となる。

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