「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

『1位』や『首位』といった言葉を監督や選手はまったく意に介していない[J22節・鹿島戦プレビュー] (藤井雅彦) -2,345文字-

鹿島アントラーズについて選手に質問すると、ナビスコカップ準々決勝2試合のイメージが強いという。約2ヵ月前に2週続けて戦い、結果は2戦2勝。アウェイでの第1戦は両者にチャンスがあったが、マリノスは中村の直接FKで先制し、後半にマルキーニョスのヘディングシュートで追加点を挙げる2-0の完勝だった。第1戦でのリードを生かし、巧みなゲーム運びから齋藤学のファインゴールで先制。その後は試合を完全に掌握して3-1で逃げ切った。

4-2-3-1_2013小椋気をつけなければいけないのは「第2戦はまったく参考にならない」(小林祐三)ということ。カップ戦におけるトーナメント方式の戦いで、しかもホーム&アウェイのトータルで勝敗が決まる戦いだ。第2戦に関しては第1戦の結果やスコアが大きく影響してくるため、ただの90分の戦いとして捉えるのは危険だ。アウェイで素晴らしい勝利を飾ったからこそ、第2戦では無理に前がかりになる必要がなく、中盤の守備も「あえて構えた」(中町公祐)。

参考にできるとすれば第1戦になるが、このゲームは前述したように互いにチャンスがあった。ゴールシーンだけを切り取るとマリノスの良さが凝縮されているが、ダヴィや大迫勇也が決定機を決めていれば、試合結果はまったく違っていたかもしれない。中澤佑二が「ウチがしぶとく勝っているというだけ。チャンスの数は鹿島のほうが多かったかもしれない」と警戒を強めれば、中村俊輔は「「ナビスコカップで勝ったときは相手のほうが決定機は多かった。次はリーグ戦だからナビスコカップとはまったく違う」と強調する。

マリノスがJリーグに誇る二大巨頭の意見は合致していた。となれば、最も参考にすべきは前半戦の第9節で対戦した際のドロー決着だろう。その試合を振り返り「難しいゲームだった」と樋口靖洋監督。主導権の所在が見えにくく、両軍のゴールともセットプレーのセカンドボール以降の展開から生まれた。崩されず、崩しきれず。「ある意味でレベルの高いゲーム」(小林)で、引き分けは妥当な結果だった。

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当時と比較し、チーム状態が良いのはマリノスだ。最近の鹿島は「攻守のバランスをとれていない印象がある」(樋口靖洋)。失点数が示すように安定感を欠いている。以前の鹿島は盤石で付け入る隙がないイメージが強かったが、いまは比較的簡単に隙を見つけられる。例えば最終ラインの守備力は単純に高くない。攻撃陣にしてもダヴィを負傷で欠き、1トップに入る大迫を除いてメンバーを固定できていない。この二つだけを見ても、マリノスとは対照的と言えるだろう。

4-4-2鹿島とはいえマリノスに不安要素が皆無というわけではない。FC東京戦の終盤に右臀部付近の筋肉を痛めた富澤清太郎はコンディションが芳しくないため鹿島戦を欠場する。今週はトレーニングをフルにこなすことができず部分合流の日が多かった。試合前日のトレーニングはウォーミングアップのみ参加し、その後は精密検査を実施するため病院へ。当初は体調不良から復帰した熊谷アンドリューを含めた19人が遠征に帯同する予定だったが、診断結果をチームドクターが確認し、最終的には富澤を除く18人ちょうどになった。

富澤の代役として出番が回ってくるのは小椋祥平となる。最近は試合終盤のクローザー的な役割を任されることが多く、先発では久しぶりの出場だ。ただし彼のプレースタイルの場合、試合勘の欠如はさほど気にならない。もともと練習試合では良さを出せない性格で、本番の公式戦で力を発揮する典型的な“本番向き”である。出場となれば、鋭い出足からの野性味溢れたボール奪取を見せてくれるはずだ。

小椋の場合、富澤とはプレースタイルが大きく異なる。富澤が最終ライン前方でフィルター役となってセカンドボールを拾い集めるのに対して、小椋は積極的にボールにアタックする狩人だ。中盤の核が変わるとなれば、相方の中町公祐やその前方にいる中村のプレーも変化するはず。富澤が負傷欠場した第7節・アルビレックス新潟戦同様、チームスタイルは若干の変更を余儀なくされる。

ボランチのメンバー変更は大きな不安用となるものの、齋藤学が右足首ねん挫から復帰するのは明るいニュースと言える。今週に入ってからはすべてのメニューをこなし、コンディション良化をアピール。前節・FC東京戦ではベンチ入りしながら出番はなく、本人は期するものがあるはず。思い起こせば、齋藤が日本代表入りへの階段に足をかけたのはナビスコカップ準々決勝・第2戦での痛快なミドルシュートがきっかけだった。ゲンの良い相手に復活を印象付けたい。

今週に入り、クラブハウスには『1位』や『首位』といったワードが飛び交った。ただ、それを気にしている大半は報道陣で、監督や選手など当事者はまったく意に介していない様子だった。おそらく現在順位が結果に与える影響は、ない。仮に鹿島に負けたとしても、それは首位に立ったことによる油断や慢心ではなく、ただの力負けであろう。無論、隙多き相手に負ける要素はほとんどない。連勝を『4』に伸ばし、3連戦の一歩目を飾りたいところだ。

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