【サッカー人気1位】錦糸町フットボール義勇軍に「解散はない…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「僕は自分の道を進みます」 ようやく再開したJリーグの映像を目にしながら、狩野健太はきっぱりと言った [狩野健太インタビュー(前編)]

 [狩野健太インタビュー(前編)]

インタビュー・文:藤井 雅彦

 

 かつてマリノスに在籍し、現在はユニフォームを脱いだ元選手を追いかけるこの企画。今回は2005年から2012年まで所属した狩野健太にスポットライトを当てる。

 キャリア15年をマリノス、柏レイソル、川崎フロンターレ、そして徳島ヴォルティスの計4クラブでプレー。最近になって引退を発表したセンスあふれるMFの今に迫る。

 前編では、引退の経緯と走り始めたばかりのセカンドキャリアについて。。

 

 


狩野健太、34歳。

今月1日、惜しまれながらもスパイクを脱ぐ決心をした。

最終所属となった徳島ヴォルティスでは20184月から約2シーズンにわたってプレー。しかし契約満了の瞬間は突然訪れた。

「昨年、徳島はJ1昇格プレーオフに進出していて、12月中旬までシーズンが続いていました。最終的には湘南に負けてしまって昇格は果たせなかったけど、チームとしては悪くないシーズンを過ごせたと思います。

 その翌日の解散式で全員が集まって、それが終わってから契約満了を伝えられました。トライアウトにエントリーする時間もなかったし、年始になってからもケガを抱えていたので興味を示してくれたチームの練習に参加することもできませんでした。

 自分としては現役を続けたい、続けられると思っていたので、まずはケガを治すことが先決だと思っていました。そうしたら、まさかこんな状況になるなんて…」

 言葉を紡ぐことを止めた狩野は、ひと呼吸つきながら青く澄んだ夏の空を見上げた。

「2月下旬に新型コロナウイルスの影響でJリーグがストップしました。その時は『これで試合間隔が詰まってくるので選手の数が必要になるだろうな』とポジティブに考えていました。まさか緊急事態宣言が発令されて、4ヵ月以上もリーグが中断するとは想像していなかったので…。

 僕としては、6月前半までリハビリを続けて現役続行を目指していました。でもコロナ禍でどのクラブも経営に余裕がないだろうし、降格がないレギュレーションになって若手起用に切り替えるという考え方もある。もしチームが見つかっても、また来年はゼロからのスタートを余儀なくされるかもしれない。

 自粛期間中はそういったことをトータルで考えましたし、自分自身が何をやりたいか考える貴重な時間になりました」

 

 

次第に『引退』の二文字が脳裏をよぎる。同時に、セカンドキャリアに想像をめぐらせた。

ある朝、自宅周辺を散歩していると、公園でボールを蹴っている少年がいた。あまり得意ではなさそうなリフティングを懸命に練習する様子に、大粒の汗が光り輝いて見えた。

もともと指導者の道に興味があった狩野の視界が自然と開けていく。現役に別れを告げる寂しさもあったが、やるべき道が見えた喜びはかけがえのないものだった。

そして自分自身で新たなビジネスモデルを立ち上げたいと考えた。

「ひとりのコーチに選手が約20人いる状況よりも、もっと近い距離で教えたし、話したい。だからマンツーマンで指導すれば自分の経験を伝えられると思いました。Jクラブに所属したほうが安泰かもしれないけど、自分がやりたいと思ったことにチャレンジしたかったんです」

 現役引退と時を同じくして『KENTA KANO private soccer training』を立ち上げた。自身でホームページを作成し、スポーツショップやフットサルコートに手作りのチラシの掲示をお願いするべく奔走する。

 

KENTA KANO private soccer training ウェブサイト
https://kenta-kano.com/

 

指導者としての実績はゼロ。今は『元Jリーガー・狩野健太』の名刺があるが、その賞味期限が無限ではないことも重々理解している。

「引退して、プロサッカー選手ではなくなりました。だから自分から動かないと何も始まらない。汗をかいて足を運ぶことも、チラシを貼ってもらうために頭を下げることも、すべては自分がやりたいことを実現するため。抵抗はないですし、新しい刺激に溢れています。不安がまったくないわけではないけど、やりがいのほうが大きいです」

 7月中旬から活動をスタートさせた。コロナ禍で厳しい状況なのは事実だが、少しずつ予約の問い合わせが入っているという。学校が終わった放課後や夜、希望すれば早朝の枠も用意しており、いわゆる“朝練”も可能だ。土日でも休日返上で積極的に指導を行っていく。

 

 

「先日、小学校2年生の男の子を指導しました。彼は最初、リフティングを5回もできませんでした。ポイントやコツを教えましたが、技術的なことをみっちり教え込んだわけではありませんでした。すると僕のトレーニングが良いきっかけになったようで、本人の中でスイッチが入ったみたいなんです。これは保護者の方から後日聞いたのですが『次の日から自主的に練習するようになった』と。その様子に保護者の方はとても喜んでいました。

 僕自身もうれしくなりました。つい最近までプロとしてプレーしていた僕が、技術のところをしっかり指導するのは大前提だと思っています。ただ、サッカーはそれだけではありません。自分から取り組むことの重要性や新たなモチベーションを伝えられたら、もしかしたら技術以上に価値があることだと思うんです」

 814日には中山駅近くにあるアネルフットパーク TUTSAL POINT よこはま中山で『KENTA KANO private soccer training summer festa 2020 ~ライバルに差をつけろ~』と題してイベントを行う。静岡学園高校時代の同級生で、現在はフーガ墨田で活躍する現役フットサル日本代表選手の諸江剣語もスペシャルゲストとして登場予定。小学校46年生と中学生にそれぞれ75分ずつ指導し、より実戦的なテクニックを伝えていく。

 

 

キックひとつ、トラップひとつ、ポジショニングひとつを少ない人数だからこそ、みっちり指導できる。細かなところまで気を配りながら、目を見てアドバイスできるのが最大のメリットだ。

「周りのライバルと同じ練習を同じ時間やっていても、なかなか差をつけることは難しい。僕自身、小さな頃からクラブや部活以外にも自主練習をやっていました。その重要性を伝えていきたい。

 通常のトレーニングも、1セット90分をマンツーマンで実施することで、かなり細かく落とし込めます。クラブ単位でもできることをやってもあまり意味がないし、僕だからやれることをやらないといけません」

 意欲に満ちた表情は、まるでサッカーを始めたばかりの少年のように晴れ渡っている。

ようやく再開したJリーグを映像で目にすると「楽しそうだな、と思いますよ」と苦笑いを浮かべる。それでも「後ろ髪を引かれるわけではなく、僕は自分の道を進みます」と続けて、視線をまっすぐに向ける。

強い意志を感じさせる言葉に、少々驚いた。

 

 

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