「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

首位相手に“再現”を狙う-直前試合展望 広島戦+青山インタビュー

前回対戦と同じ展開が理想だ。5月にアウェイで対戦した際のマリノスは、強かった。攻守両面において機能性を発揮し、のちに首位を走ることになるサンフレッチェ広島を撃破した。

当時を振り返ると、このゲームで初先発を飾ったマルキーニョスが2本放ったシュートのうちの1本をぶち込んだ。小野の単純なクロスを、単独の力によるヘディングで決めた形だ。相手のマークを一瞬外し、スペースを作り出して飛び込む。これぞ“決定力”と言うべきプレーで、青山敏弘の超ロングシュートによる失点を帳消しにした。守っても前後半を通じて広島をほぼ封じたと言える。当時のノートを開くと「今日の広島は怖くなかった」と栗原勇蔵が自慢げに振り返ったことをメモしている。相手の2シャドーに対してダブルボランチがマンツーマン気味につき、1トップの佐藤寿人も中澤佑二と栗原のどちらかが離さなかった。攻撃的なチーム相手に、持ち前の守備力を発揮して勝ち点3を獲得した。

冒頭で述べたように、その再現が理想だ。しかし、それは容易なことではない。広島はそれから勝ち点を積み重ねることで自信を得たはずである。樋口靖洋監督は自身が今シーズンのマリノスで確立すると宣言した“スタイル”という単語を用いて、「スタイルが確立されている。とても完成度の高いチーム」と形容した。前回に続いて抑え込むのは至難の業と言えるだろう。

 

理由は相手だけでなく、内にも潜んでいる。広島戦に臨むにあたり、メンバーが大きく異なるのだ。システムこそ前回も守備時は2トップの一角を担う小野裕二が下がって[4-2-3-1]に変化していたが、その小野にしても役割が異なる。相手のボランチをマークする役目はトップ下の中村俊輔が担当するだろう。とはいえ、守備を任せるべき選手でないことは言わずもがな。「ボランチの青山のところから縦とサイドに展開してくる」(樋口監督)のは分かりきっているだけに、ここで中村がどれだけ不得手な仕事をできるかが最初のポイントとなる。

また、ダブルボランチが両者とも前回から変更される。富澤清太郎と兵藤慎剛はともに守備の耐久力に優れ、セカンドボール収拾やルーズボール争いにも強さを発揮する。本来ならば前回からの据え置きで戦うのが理想なのだが、富澤清太郎は累積警告によって出場停止。兵藤はマルキーニョスの出場停止で駒不足になっている前線に入ることが濃厚だ。

ダブルボランチを務めるであろう熊谷アンドリューと中町公祐が守備のタスクをどれだけこなせるか。前者はここへきての成長株ではあるが、絶対的な経験が足りない。後追いになった場面ではファウルを犯す悪癖もある。後者はそもそも守備が得意な選手ではない。マイボール時のゲームコントロールや周囲を動かす能力はとても高いが、受動態で相手の攻めに対抗する駒としてはいささか強度に不安が残る。守備だけを考えれると兵藤は中町よりも上のプレーヤーだが、前述したように前線も人材難である。ベンチには入る狩野や松本怜、松本翔への信頼度は先発起用するほど高くない。

最終ラインに目を移しても、栗原勇蔵の出場停止にともない青山直晃がスタメン出場する。ポテンシャルに疑いの余地はないのだが、実戦で中澤とコンビを組むのは今シーズン初めてだ。「しっかりラインの上げ下げにもついていきたい」と意気込むものの、対峙する相手は得点王争いを20得点で独走する佐藤である。劣勢を強いられる可能性は否めない。

前回の11人からGKを含む4人が入れ替わり、スタートポジションで見ると実に7人が異なる名前だ。「メンバーが変わっても守備のコンセプトは同じことを求める」と樋口監督は言うが、それは簡単なことではない。メンバーを固定して戦ってきたチームだからこそ、戦力低下をどれだけ最小限に食い止められるか。もちろん見る角度を変えれば、ベンチメンバーを含めた総合力を試す絶好の機会でもある。対戦するのが首位チームなのだから、相手に不足なしである。

 

【voice of players(広島戦にむけて) 青山 直晃 -ハードだけどやりがいがある-】

――今シーズン2試合目の先発が濃厚だが

「鹿島戦は急きょ出番が来て、序盤は慌ててしまった。今回はそういうことがないように、気持ちも含めてしっかり準備してきた。(中澤)佑二さんが隣にいるのは心強いし、ラインコントロールにもしっかりついていきたい」

――佐藤寿人への対策はあるのか

「ディフェンスにとって良い対策があったら、あんなに点を取っていないと思う(苦笑)。対策を立てられないからいい選手。対策なんてものはない」

――たしかに(笑)

「しいていえば、90分間気を抜かないこと。一瞬の隙を突いてゴールしてくるし、マークを外してくる。少しでも油断すればゴールされてしまう。ただ寿人さんと駆け引きするのは楽しい。ハードだけどやりがいがある」

――練習で大黒の動き出しと対峙している経験が生きるのでは

「そのとおりだと思う。オグリさんもすごく嫌な動き出しをする選手で、いつも困っている。その経験を生かして、試合に臨みたい」

 

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