「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

“曲者”との一戦 【J26節・清水戦プレビュー】 (藤井雅彦) -1,943文字-

長いシーズンも9試合を残すのみ。そろそろゴールテープが見え始めてきた頃だ。この時点でマリノスは首位に立っている。今シーズンの安定感を考えると、ここから急降下する危険性は低い。もちろん、不測のアクシデントといえる負傷者や不要な累積警告がなければ、の話だ。

4-2-3-1_Best六反 最も怖いのが累積警告となる。清水エスパルス戦を迎えるにあたり、レギュラークラス5選手が累積3枚となっている。栗原勇蔵、ドゥトラ、富澤清太郎、齋藤学、そしてマルキーニョス。レギュラーを固定したきたがゆえに、誰か一人でも欠けたときの戦力ダウンは大きなものとなるだろう。代役を見つけるのは困難だ。

負傷に関して言えば、いつ何が起こるかわからない。今週も水曜日の居残り練習中に榎本哲也が右足首をねん挫してしまった。翌日の練習には参加せず暗雲が立ち込めたものの、室内でのリハビリに努めた結果、金曜日は問題なくプレーできた。これによって清水戦の先発に見通しが立った。とはいえ、いつアクシデントが襲うかわからないという示唆でもある。ここまで主力クラスに大きな負傷がないことで、逆に不安に駆られる部分もある。

主力メンバーさえ揃えば、マリノスに不安は少ない。樋口靖洋監督は残り9試合の展望を「ここからは勝ち点3を取るゲームプランが必要。勝ち点1ではダメ」と強調した。目標とする勝ち点『68』まで、現時点で『20』足りない。残り9試合なので最低でも6勝は必要だ。6勝2分1敗という皮算用が成立すれば、マリノスは栄冠に輝いているだろう。

指揮官はさらにこう付け加えた。「ここからは連勝の重みが増してくる。周りに与えるダメージも大きくなってくる」と。リードしているからこその強みだ。単純に、マリノスが勝ち続ければ勝ち点差は開くことがあっても縮むことはない。1試合で3ポイント以上獲得することは不可能なのだから、マリノスが勝ち点3を奪取すれば安泰なのだ。勝ち点1では足りないという根拠でもある。

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しかも連勝となれば追いかけるチームに精神的なダメージも与えられるだろう。追いかけても届かず、離れていくのだからたまったものではない。そういった状況を作り出せるのはマリノスだけだ。チーム関係者が「目の前の1試合1試合」と常々言うのはそのためである。

4-3-3清水 そんな局面で迎える相手は現在リーグ戦3連勝中の清水。まさしく“曲者”と言えよう。前回対戦では5-0と大勝したが、当時の清水は新システムにトライしていたこともあり、チームとしてまったく機能していなかった。その後もしばらく低空飛行を続けたが、勝負どころのゲームを勝ちきることで降格圏内には至っていない。チームとして安定感があるとは言い難いが、たまに爆発的な力を発揮する。薄気味悪い相手と言えるだろう。

こういった相手を封じ込めるにはセットプレーで得点するのが手っ取り早い。しかしながらセットプレーからのゴールは第17節・浦和レッズ戦を最後に遠ざかっている。実に8試合もセットプレーからゴールが生まれていない。これはマリノスにとって異常事態である。フィニッシュホールドが炸裂していないのでは勝ちきれなくて当然だ。

最後にセットプレーが決まった浦和戦までのセットプレーからのゴール数は『11』(こぼれ球を含む)。それまでの総得点は『34』で実に約34%がセットプレーから生まれていた計算となる。しかし、その後の12得点が流れの中から決まったことでパーセンテージは25%までダウンした。これでは“並”の数字と言わざるをえない。

すべては中村俊輔のキック精度次第となる。相手守備陣を無力化する高精度ボールを送り込めば、ゴール前での戦いで圧倒的優位に立てる。セレッソ大阪戦では明らかに精度を欠き、本人の口から「情けない」という言葉が聞かれた。それを受け、今週は試合前日にボールにインパクトする際の感触を入念にチェック。感覚を確かめながらFK練習を行った。

相手の警戒を上回る精度を求めたい。それができたとき、マリノスはリーグ戦3試合ぶりの勝利を手にしていることだろう。

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