「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

理想は前半に得点を挙げて、主力を早めにベンチへ下げること [天皇杯3回戦・栃木戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,648文字-

週末にサンフレッチェ広島との大一番を控えている。リーグ戦における首位攻防戦で、この試合結果がシーズン終了時の順位に大きな影響を与えるのは間違いない。その上でJ2の栃木SCと天皇杯3回戦を戦う。

次を見据えたマネジメントが欠かせない。例えば先日のナビスコカップ準決勝第2戦・柏レイソル戦で右足首をねん挫して途中交代した兵藤慎剛は、今シーズン初めて公式戦に出場しない。柏戦以降は一度もグラウンドに姿を現さず、室内でのリハビリに努めている。「兵藤は週末を目指している。腫れは引いてきている」と樋口靖洋監督は言うが、その表情はやや堅い。負傷から中3日で行われる試合を回避させるのは当然だろう。

兵藤のように負傷が明らかならば決断は難しくない。悩ましいのは疲労度をいかに考慮するか、だ。「シーズンの終盤なので疲労を配慮しないといけない選手もいる」(樋口監督)。その対象を誰にするか。試合前日までのトレーニングを見る限り、明らかに別メニューで調整している選手は見当たらず、試合前日のトレーニングには負傷者を除く全選手が参加した。おそらくマルキーニョスも中村俊輔も、あるいは広島戦が出場停止となるドゥトラも先発メンバーに名を連ねるだろう。

4-2-3-1_佐藤端戸 唯一、中澤佑二のみ有給休暇となりそうだ。しかし、それはベンチにファビオという優秀なバックアッパーが控えているからこそで、そうでなければ彼も出場していたのだろう。中澤クラスの選手であれば自身のコンディションは本人が誰よりも分かっているはず。出場回避を決めるのは監督の仕事だが、しっかりとコミュニケーションをとった上で週末に備えるのは妥当な判断だ。

心配なのは中澤を除くベテラン陣の起用法である。特に負傷明け間もないマルキーニョス、そして柏戦の終盤に疲労の色が濃かった中村の状態が気になるところ。栃木は格下とはいえ簡単に勝てる相手ではないだろう。それについては中村も「J1レベルだと思って戦う。3-0とか4-0の試合にはならないと思う」とリスペクトしていることを明かす。本当に苦戦を強いられたとき、彼らを交代させるのは難しくなる。なぜならば試合を決めるための特筆すべき能力を有しているからだ。試合がもつれればもつれるほど、出場時間は長くなる。すると週末に与える影響も大きくなる。

天皇杯を軽視すべきという意見ではない。「ACLにつながる大会」(樋口監督)という点で、個人的にはナビスコカップよりプライオリティーが高くてもいいと考えているくらいだ。優勝すれば無条件で来年のACL出場権を獲得できる。トーナメントを勝ち上がることで年末、あるいは元日までシーズンを楽しめるというメリットもある(一方で来シーズンに響くとも考えられるが)。だから、まだ3回戦で相手が格下だからといって油断は禁物だ。

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問題はどこで折り合いをつけるか。マルキーニョスと中村に関してはベンチスタートという一手があってもいい。1トップに藤田祥史、2列目に複数の選択肢から選手をチョイスすれば、チームはどうにか回る。機能性と相手への威圧力は落ちるだろうが、やむをえない。苦戦を強いられらときのみ、主力を投入して勝ちに出ればいい。しかしスタメン起用すれば、そういった采配はできない。樋口監督は2点、もしかしたら3点のリードがなければ主力を早い段階でベンチに下げられない性分なのだ。

理想は前半のうちに複数得点を挙げて、主力を早めにベンチへ下げること。難しいゲームになるのは百も承知の上で、理想を追い求めたい。すべてはタイトルを獲得するためだ。

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