「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

あとはゴールだけ:藤井雅彦試合後エクスプレスレポート

 

 

プレビューでも述べたように、前回のサンフレッチェ広島戦から、マリノス側はメンバーが大幅に変わっていた。

スタメンは4選手が違う顔で、スタートポジションは7つも違った。これだけ名前と配置が変われば、同じ内容を維持するのは困難な作業となる。相手が完成度を高めていることも含めて、不安が先行する試合前だった感は否めない。

しかし蓋を開けてみれば、前回対戦に引き続きマリノスは広島の攻撃を見事に封じた。

中町公祐と熊谷アンドリューのダブルボランチが最終ライン前でしっかり防波堤となり、狙いをもって相手の縦方向へのボールをカットしていく。

熊谷が「守備はディフェンスラインに入るくらい下がった。(中澤)佑二さんからそういう指示があったので、そういう守り方をした」と話したように、マンツーマンでつく場面はたしかにあった。それでも、最終ラインに吸収されずにスペースを消す働きもできていた。マンツーマンにとらわれることなく、ゾーンとマンツーマンを局面によって使い分けた。それによって人につくマークが得意ではない中町も、戦術眼の高さを生かして特に前半は何度もインターセプトに成功した。栗原勇蔵の出場停止にともない先発出場した青山直晃とともに、中澤佑二を含む中央の4人が守備をしっかり支えた。「相手が嫌がっていた」という樋口靖洋監督の感想はおそらく正しいだろう。

したがって、あとはゴールだけであった。

ゴールを運に任せるべきではないのかもしれないが、水ものであることはたしか。入る試合ではあっさり入るが、入らない試合ではどんなに工夫をこらしてもゴールネットを揺れない。同じように、決めて当然のはずのPKが決まらない日もある。

小野裕二が戦犯扱いされるのは当然だ。それまでの貢献度や、そもそもPKを獲得したことが評価されるのは本筋と食い違っている。決めてこそのPKであり、キッカーとして名乗り出た以上は決めなければいけない。

「今日勝てなかったのは自分の責任。しょうがないということはない。蹴ることに集中したけど精神力が弱かった」

猛省を促すと同時に、次への糧にしてほしいものだ。

 

大宮アルディージャ戦に引き続き、スコアレスドローに終わった。

これではマルキーニョス不在が大きく影を落としたと言われても仕方がない。ゴール前で力を発揮し、1点取れていれば勝ち点は2試合合計で『2』ではなく『6』にすることも十分に可能だった。鹿島アントラーズ戦でマリノスは素晴らしいファイティングスピリットとともに勝ち点3を獲得したが、その代償はあまりにも大きかったと言わざるをえない。3位の浦和レッズが足踏みしていることで、余計にそう思わずにはいられない。

もう一人のストライカーである大黒将志は起用法をめぐって樋口靖洋監督と対立し、すでに構想外となっている。チームが勝つために人材であることはたしか。ほかに得点力を持つ選手がいればいいが、現状はそうではない。

マルキーニョス一人がいれば解決できる問題でも、開幕直後のように負傷に見舞われることや今回のように出場停止になるケースもある。そして来シーズン以降も見据えたとき、36歳という年齢を考えるといつまでも彼一人に頼っているわけにはいかない。

小野がこれからストライカーとして変貌を遂げるか、はたまた齋藤学がゴールも決められるドリブラーになるのか。そうなる確率と、新たにゴールゲッターを獲得するのと、どちらが即効性が高いか。前者を選択肢して彼らを育てるならば、それなりの時間と覚悟を必要とするだろう。

 

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