「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

すべてが追い風に思える [J30節・大分戦プレビュー] (藤井雅彦) -2,336文字-

すべてが追い風に思えるの筆者だけだろうか。楽観的すぎる、と注意されるかもしれないが、ここのところの好気流はヴィクトリーロードに思えてならない。

4-2-3-1_佐藤左 もっとも数日前までは暗雲が立ち込めていた。というのも、日本列島を襲う台風27号の影響で試合場所である大分への移動が困難となった。通常、アウェイゲームの場合(近隣である川崎フロンターレ戦とのアウェイゲームを除く)は現地に前日入りし、前泊して試合に備える。今回の場合、27日の日曜日に試合が開催されるため、当初の予定では26日の土曜日に羽田空港を利用し、空路で九州は大分へと向かうはずだった。

しかし、どうにも天候が怪しい。最悪の場合、台風は土曜日に関東地方を直撃する恐れがあり、その場合は飛行機が欠航になる恐れもあった。空路に限らず、陸路に影響を及ぼす可能性も否定できず、新幹線という移動手段すら使えないかもしれない。これがサンフレッチェ広島との首位攻防戦を制し、2連休明けの25日水曜日の話である。

そこでクラブスタッフは考えた。まず移動日を前日から前々日に前倒しする。ただし今度は飛行機が飛んだとしても、台風の影響が九州地方に残っている可能性を考えなければならない。つまり、離陸しても着陸できない恐れがあったわけだ。いくつか挙がったプランとして、大分着が難しいときは福岡まで飛び、そこから陸路で大分入りする。あるいは新幹線の利用も含めて大阪を経由して現地入りする手段も選択肢に数えられた。

結果、チームは試合前々日の25日金曜日の午後に羽田空港から大分空港へとダイレクトで入る選択をした。それについて「移動のリスクを考えた」と樋口靖洋監督は淡々と語る。最悪の事態だけは回避しなければならず、妥当な決定と言えるだろう。前日練習は大分県内にて行われ、フットサルコート2面という限られたスペースではあったが、ウォーミングアップやボール回し、シュート練習などを行ったようだ。

ちなみに、その後の天候の経過は周知のとおり。この原稿を執筆している26日昼過ぎ現在、台風はすでに関東地方を離れている。多少の降雨こそあるものの、風はほとんどない。当初の予定通りの場合、試合前日の午前中にマリノスタウンで通常通りのトレーニングに影響があったかもしれないが、移動という側面では午後便に関してほぼ問題なかった。とはいえ、これらは結果論に過ぎない。リスクを最小限にとどめる選択は当然で、選手の心理状態を考慮しても然るべき判断だった。

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何はともあれ、試合に関して台風の影響を受けることなく戦えるのは好材料だろう。スタジアムのグラウンド状態は不明ではあるが、暴風雨の中でのゲームは紛れが生じやすい。思い返せば、大分トリニータとの前半戦も、会場のニッパツ三ツ沢球技場が強風に見舞われ、失点場面はその風によってGK榎本哲也のゴールキックが押し戻されたところから始まっている。首位を走っているいま、そういった偶発的要素にはなるべく遭遇したくない。

4-1-4-1大分 その一方でアクシデントを乗り越えたチームがチャンピオンに相応しいという見方もできる。まずはここまでに挙げた天候、さらに対戦相手がすでにJ2降格の決まっている最下位チームというのも、なんとも不気味である。「相手はリラックスした状態で戦える」と展望したのは出場停止明けとなる40歳のドゥトラ。失うもののないチームは、直近の公式戦2試合でいずれも完封勝利を飾っている。システム変更が奏功し、状態は上向いているようだ。

マリノスは「しっかりとした目的意識を持ってプレーしなければならない」(ドゥトラ)。対戦相手の立場や置かれている状況はあまり関係ない。『ACL出場権獲得』という目標、そしてその先にハッキリと見えている『優勝』に向けてまい進するのみだ。今シーズンここまでの戦いぶりを見る限り、力差ある相手に取りこぼすことは考えにくい。ホームで引き分けたときとは置かれている立場が違い、モチベーションも確実に高まっている。

メンバー構成に目を移すと、ここのところ好調をキープしていた栗原勇蔵の出場停止は痛い。栗原と中澤佑二の堅陣ぶりは明らかで、4試合連続無失点という結果がそれを証明していた。そのタイミングでの出場停止は間違いなくマイナス要素なのだが、代役にファビオが控えているのは心強い。樋口監督もファビオに対して全幅の信頼を寄せており、「彼は常に100%の力を出せる」と自信を持って送り出す。

最近はどの試合でも主力の誰かを出場停止、あるいは小さな負傷で欠いている。それでも代わりの選手がしっかりと力を発揮している。今節は前出のファビオ、そして兵藤慎剛が右足首ねん挫から復帰するが、広島戦でも一定のパフォーマンスを見せた佐藤優平を継続して起用するかもしれない。選手層の薄さがほんの少しではあるが改善されつつあるのも、タイトルを狙うチームならではの事象と言えるかもしれない。

ラクに勝てなくても、しぶとく勝ち点3をもぎ取ればいい。台風一過の勝利となるか。マリノスはここで立ち止まるわけにはいかない。

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