「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

名誉挽回のチャンスはここしかない [天皇長野戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,760文字-

真面目な性分の指揮官は、中2日でリーグ戦が控えていることを過度に意識しない。周囲は優勝争いという響きに惑わされがちだが、クラブとしての最初の目標は『来季のACL出場権獲得』である。条件はリーグ戦で3位以内に入る、あるいは天皇杯で優勝することである。

少し脱線するが、今年の天皇杯の行方は実に混沌としている。マリノスが今シーズンのリーグ戦で未勝利に終わった柏レイソルと鹿島アントラーズはベスト16で姿を消した。この両チームと言えば近年、数々のタイトルを獲得し、特にトーナメント戦で抜群の力を発揮してきた勝ち組である。その2チームがすでに姿を消している。この展開に目を輝かせたのは、試合と勝利に飢えている中町公祐であった。

4-2-3-1 今シーズンのマリノスは安定して勝ち星を積み重ねてきた。ライバルチームが早々と姿を消しているトーナメント戦でも十分に優勝のチャンスがあるだろう。ベスト16を突破すると、対戦相手は先日勝利した大分トリニータ。そこも突破できると準決勝は川崎フロンターレ対サガン鳥栖の勝者。いずれも不得手な相手ではない。元日決勝の舞台が視野に入る組み合わせと言っていい。

そのためには、まず目の前のAC長野パルセイロを倒す必要がある。JFLでは断トツで首位を走っており、スカウティングを終えた樋口靖洋監督は「間違いなくJ2クラスの力があると思う」と警戒心を強めている。JFLもJ2も格下には違いないが、彼らの高ぶる野心はときにジャイアントキリングを起こす。近年、マリノスはその餌食になっていないが、遡れば暗い過去もある。油断大敵な一戦であることは間違いない。

もっともメンバー構成を見る限り、マリノスに隙は見当たらない。冒頭でも述べたように連戦という位置付けではないためん、直近のリーグ戦から大きくメンバーを落とすことはしない。唯一、中澤佑二のみコンディションを考慮して先発から外れるが、齋藤に関しては負傷という理由がある。また、中村俊輔に関しては胆のう炎から復帰して13日以降は全体練習をフルメニューこなしている。病気の症状も出ず、フィジカル的なリバウンドもない。極めて順調な状態と言える。とはいえ、ここで長時間出場する理由も見当たらない。「正直言ってあんまり長い時間やらせたくない」と樋口監督。リスクを考えると、勝敗が決した状態で試運転的に出番を与えられればベストだろう。当面はベンチスタートで様子を見ることになる。

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あえて新鮮味を求めるとすれば、ボランチで先発する熊谷アンドリューの名前が挙がる。中町、富澤清太郎のレギュラーボランチ、そして3番手の小椋祥平の影に隠れるように、今シーズンはリーグ戦での先発がここまで1試合もない。ルーキーイヤーの昨年よりも出場数が減ってしまったのは残念というほかない。これに関しては起用法以前に自身の体調管理の甘さという自責が大きい。夏の韓国遠征と新潟十日町キャンプ後にチャンスを掴みかけたが、その後の体調不良でベンチメンバーから漏れ、先発の機会を逃してしまった。

名誉挽回のチャンスはここしかない。中村が完全復帰してスタメンに戻ってくれば、再び中町がボランチとして試合出場するだろう。シーズン終盤のここへきてメンバーを大きく変えることは考えにくいからだ。それでも熊谷が長野戦でしっかりプレーして勝利に貢献することには意味がある。レギュラーボランチに不測の事態が生じた場合、途中出場も含めて出番を得られるか否かはパフォーマンス次第。責任あるプレーをしなければならない。

チームとしても名古屋戦で一度途切れた流れを取り戻すために快勝を求めたい。リーグ戦で一度も連敗していないという粘り腰が首位を走る原動力だが、公式戦全体を含めてもマリノスは一度も連敗していないのである。ここを通過点として、残りシーズンを駆け抜けたい。

 

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