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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

9年ぶりの歓喜が待っている [J32節・磐田戦レビュー] (藤井雅彦) -2,215文字-【無料記事】

 

ここ数試合のパフォーマンスはやはり低調だった。それをあらためて痛感させられる、最高の戦いをジュビロ磐田戦で見せてくれた。ここで引用するコメントは先発している外国籍選手二人のものが最適だろう。「全員が全力を尽くして戦って、これがマリノスだという戦いをした」(マルキーニョス)、「今日は本当に全員が今年のマリノスらしい姿勢を見せた試合だと思う」(ドゥトラ)。名古屋グランパス戦、そして天皇杯4回戦・AC長野パルセイロ戦での低調な内容を払拭するのに十分すぎる快勝を飾った。

4-2-3-1_best マリノスらしさの象徴は、チーム全体の守備意識の高さだ。「守備はFWから始まる」というマルキーニョスの信念を筆頭に、中盤は切り替えの早さで相手を圧倒。ボールポゼッションで優位に立っても崩しきれないのはサッカーに相手がいるから。しかし、攻める回数を増やしていけば、どこかで間隙が生まれ、ボディブローのようなダメージにもなる。そうするには失ったボールをすぐさま奪い返すのが最良の方法だ。失っても、すぐに奪う。その繰り返しで磐田を追い詰め、ピンチは皆無に等しかった。

攻守における最適な距離感を実現するには、やはり司令塔の存在が大きかった。まさかのアクシデントとなった胆のう炎から復帰した中村俊輔は、個人の出来としては絶好調時のものではなかったかもしれない。試合後、「自分の中では少しパワーが出ない感じもあった。抜ききるというようなイメージは出てこなかった」と振り返っている。好調時であれば力強く、同時に巧みなキープを見せる場面で、ボールロストするシーンも見られた。

それでも要所を締めるのが中心選手たる所以だ。ここぞという場面ではきっちりボールキープし、味方に安心感を与える。「シュンさん(中村)は取られない」(榎本哲也)。背番号25というランドマークがいることは、周囲の選手にとっても分かりやすい指標となった。中村が下がれば中町公祐が上がる。中村が幅広く動いて生まれたスペースを兵藤慎剛や齋藤学が効果的に使う。その効能は攻撃面だけにあらず。中村がハイボールを競り合い、身を投げ出してスライディングする。ユニフォームを汚していくことで周りは自然と鼓舞される。「シュンさん(中村)があれだけ汗をかいているのを見ると、もっとやらないといけないという気分にさせられる」(小林祐三)。大声を張り上げて叱咤激励することだけがやり方ではない。

中村のみならず、チーム全体のモチベーションも素晴らしく高かった。試合前夜の宿舎にて選手のみでミーティングを開催。発起人はマルキーニョスで「優勝していないのに優勝しているかのような雰囲気」のチームに喝を入れた。久しくゴールから遠ざかっているマルキーニョスが最近のゲームで鬼神のごとく走っているとは思わなかったが、自発的な言動は自分自身への刺激やプレッシャーになる。磐田戦でのマルキーニョスは攻守両面で誰よりも走っていたのではないか。

マリノスらしい戦いをした結果、無失点で終え、決勝ゴールをDFが決めるというのも美しいシナリオだ。今季、フィールドプレーヤーのレギュラークラスで無得点なのは小林祐三、そして中澤佑二の二人だけ。ゴール前に上がる回数や過去の実績を考えれば、両者を同列に並べることはできない。全31試合に先発出場している中澤が無得点なのは、ある意味で異常事態だった。

4-4-2磐田 その鬱憤を晴らすように、こぼれ球を豪快に押し込んだ。起点となる左CKはもちろん中村で、マルキーニョスが首の筋肉の強さを生かしたヘディングを放つと、相手GKは止めるのが精一杯でキャッチできなかった。誰もいない無人のスペースに走り込んだのは背番号22だけで、勝利を大きく手繰り寄せるゴールとなった。

試合後、選手は喜びと同時に驚きを隠せなかった。喜びは勝利あってこそ、驚きは他会場の結果を聞いたことに。2位の浦和レッズ、3位のサンフレッチェ広島、そして4位の鹿島アントラーズが、それぞれ敗戦した。マリノスを追う後続がすべて足踏みしている間に、しっかりと勝ち点3を上積みした。2位以下に勝ち点4差以上をつけて、残り2試合を迎える。試合前に栗原が話していた「いまは野球でいうM(マジック)3だけど、ほかのチームの結果次第ではM1にできるかもしれない」という言葉が現実になった。

「素晴らしいゲームだった。でも我々はまだ何もつかんでいない。また1週間、いい準備をして今日以上のゲームを見せたい。ホームで歓喜の瞬間を迎えられるように、浮き足立つことなくゲームを戦いたい」。樋口靖洋監督は自身に言い聞かせているようにも見えた。いま、目の前には何も障害がない。王手をかけた状態で、充実の日々を過ごす。そのヴィクトリーロードの先に、9年ぶりの歓喜が待っている。

 

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