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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

喪失感と虚無感 [J最終節・川崎戦レビュー] (藤井雅彦) -2,090文字-

「高望みしちゃ、いけないよ」

 夏を過ぎた頃、中村俊輔が発した言葉をあらためて思い出した。思い返すと彼は開幕前からずっと言い続けてきた。「ウチはそんなに強いチームじゃないから。Jリーグでは真ん中くらいの力でしょ」と。

4-2-3-1_best 謙遜ではなく、冷静に、客観的に、俯瞰しての言葉だろう。オフを大型補強を敢行したわけではなく、スタイルを継続することによる上積みがあったとしても、それだけではタイトルを勝ち取るための根拠としては乏しかった。応援する側のサポーターは認めないかもしれないが、多くのメディアが中村の言葉に大きく頷き、否定する者はいなかった。

それなのに、いつの間にかチームの目標が上方修正されることに。当初は『ACL出場権獲得』で、リーグ戦で3位以内に入る、あるいは天皇杯での優勝が方法であった。昨シーズン終盤の成績と、他チームとの相対関係、そして少しの運が向けば決して不可能ではない目標といえる。開幕前のチーム作りは若干の紆余曲折もあったが、開幕してからは昨シーズン終盤の戦いを踏襲し、ギャンブル性の低いサッカーで着実に勝ち点を上積みしていった。

チームも、そして筆者も優勝を意識し始めたのは、おそらく第29節でサンフレッチェ広島との首位攻防戦を制した頃からだと思う。過去8年間、この日のような勝負どころでことごとく負けてきたチームが、勝負強く接戦を制した。4万人を超える観衆が作り出した雰囲気も素晴らしく、まさしくホームの力が存在していた。チームを、なにより選手を“その気”にさせるには十分すぎる勝利だった。残り5試合を駆け抜けてくれるのではないか、という期待に満ち溢れる勝利である。

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一方で、それ以降は他チームの結果が気になるようになり、プレッシャーと戦う日々となった。一戦必勝ではなく、ライバルチームの動向次第という面が強くなる。それまで「この試合を勝てば大きいでしょ」と言っていた選手が、突如として「先のことは考えずに…」と口にする。もちろん選手とて一人の人間である。あって然るべき変化であり、この壁を乗り越えた先に優勝があるのだろう。

中村に話を戻すと、川崎フロンターレ戦前日までの彼はこれまでどおりのスタンスを貫いていたように見えた。アルビレックス新潟に敗れてホーム最終戦での優勝を逃したときも、それまでと変わらない素振りを見せた。最終節前の一週間も相変わらずサッカーを楽しみ、練習後は報道陣の笑いを誘った。試合前日に「オレが決めるという気持ちになってきている」と話したが、それも記者の挑発に乗った感が強い。いわゆるリップサービスに過ぎない。

4-2-3-1川崎 それが、フロンターレに敗れ、優勝を逃すと、中村は人目をはばからず号泣した。ピッチに崩れ落ち、しばらく立てなかった。呆然とする選手、さばさばした表情の選手、悔しがる選手と様子はさまざまだったが、中村ほど感情を表に出した選手はいなかった。それくらいこの試合に懸けていたということ。語弊を恐れず言えば、本人ですら気付かないうちに高望みしていたのかもしれない。

もちろん中村だけではなく、チームとしてもいつの間にか『ACL出場権獲得』は通過点となり、目的は優勝の二文字のみとなった。だからこそ1位を逃したショックは大きい。34試合戦い、目前に迫っていた1位の座をつかみ損ねた。中澤佑二は「下から這い上がっての2位ならいいけど、ずっとトップにいて最後に取りこぼしたので精神的に痛い」と胸の内を明かす。

2位という成績は悲観すべき結果ではないが、より上の順位にいくチャンスがあっただけに悔いが残る。そして、多くの人間が収穫期は今年だと本能的に理解しているからこそ、落胆する。来年も同じように優勝争いできる保証はなく、むしろその可能性は低い。大枚をはたいた補強でもしないかぎり、いまのチームは頭打ち状態に近い。監督も選手も変わらないのであれば、おそらくここからの進歩は望めない。いまのマリノスにおいて皆が年齢を一つ重ねる意味合いは他チームと大きく異なる。

本来なら、ひとまず2013シーズンのリーグ戦が終わり、勝ち残っている天皇杯に注力するのだろう。今度こそタイトルを勝ち取ろうという流れが自然なのだが、現時点でチームからそういった雰囲気を感じ取るのは難しい。大魚を逃した喪失感と虚無感に支配され、明るい未来を思い描くことなどできない。押し寄せてくるのが天皇杯や来季への期待ではなく、不安ばかりなのは筆者だけだろうか。

 

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