「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「ACLを出るだけの大会にはしたくない。めちゃくちゃワクワクしてる」 監督 樋口 靖洋 インタビュー【3】 -2,285文字- 

最後の最後に栄冠を掴み損ねた。だが、2013シーズンのマリノスの歩みは決して間違っていなかった。Jリーグアウォーズでは優秀選手に10人を輩出し、中村俊輔と中澤佑二はベストイレブン、中村はMVPも合わせて受賞した。他チームも認めるパフォーマンスだった。

そのチームの指揮を執ったのが樋口靖洋監督だ。リーグ戦が終わり、年末に差し掛かったある日、ヨコハマ・エクスプレスの独占インタビューに応じてくれた。初回は、リーグ戦2位に終わった心境を赤裸々に語る。

監督 樋口 靖洋 インタビュー【2】からのつづき


 

――2013年はいまのスタイルを追求するなかで、ある程度完成したシーズンだったと思います。それだけに来年、さらに上積みしていくのはとても難しい作業に思えます。

「狙いとするスタイルはだいぶ浸透していますね。それを無理に変えていく必要もないでしょう。僕のイメージの中で、監督1年目は開幕から苦労しながらも、ブレずにやり続けることで土台ができた。でも引き分け数14が示すように勝ちきれないチームだった。2年目はそのスタイルをさらに確立できたけど、僕の中では守り勝ったという印象が強い。やはり得点49では優勝できない。失点31についてはまずまずの数字だったし、優勝ラインに達していたと思う。だから守り勝って2位という順位になった。来季は攻め勝つシーズンにしなければいけない。1年目に築いたベースに加えて、2年目の守り勝つという強みを持ち、3年目はさらに得点力を上げていく。言い方を変えると攻撃の推進力をいかに生み出すか。もっとドリブルがあってもいいし、ダイナミックなサイドチェンジも必要になる。セレッソ大阪のようなラスト3分の1のアイディアも増やしていかないといけない。もしかしたらある程度パターン化した攻撃が必要かもしれない。そのあたりは編成も含めて考えていかなければいけない」

――監督という立場や仕事を否定することになるかもしれませんが、攻撃に関してはプレーヤーにかかる比重が大きいのでは?

「たしかに人がいてこそだと思います。でも僕の仕事はそれぞれ個性を持った選手をどう組み合わせるか。欧州のビッグクラブのように能力の高い選手をあちらこちらから引き抜いてこれるわけではない。だから人について言い始めたらキリがない。選手をどう組み合わせて、チームを一つの方向性に持っていけるかが大事になる」

――ただ、使えるカードが多いにこしたことはないですよね。

「これはフロントにも要望していることですが、2013年の選手数だと単純にカードが足りないでしょうね。ACLがあるということは海外遠征が入ってくる。火曜日や水曜日に海外遠征し、それから帰ってきて中2日でリーグ戦を戦う場合もあるでしょう。そうなったときに今年以上にコンディショニングが難しくなる。カードを揃えつつ、うまく選手をチョイスしていかなければいけない」

――13シーズンは負傷やアクシデントが比較的少なかったですよね。

「素晴らしいことだけど、異常なくらい少なかった。これだけ長期離脱が出なかったシーズンは僕がいくつかのJクラブで監督になってから経験したことがない。トレーニングの量や負荷を変えた部分があったので、それが良い方向に出たのかはオフに検証しなければいけない。でも前年と同じようにやれば、負傷者が少なくなるというものでもない。そこは難しいところですね」

――2014年は多くの大会に出場することになりますが、そのプライオリティーについてはどう考えていますか?

「まずACLに関して言えば、出るだけの大会にはしたくない。出場するからにはタイトルを狙ってチャレンジしなければいけない。つまりチャンピオンを目指すということです。それと当然、Jリーグですね。この二つはプライオリティーの上位にくる。ナビスコカップや天皇杯はACLの結果次第で日程面を含めて考えていくことになるでしょう。だからまずはW杯の中断期間前のリーグ戦とACLをどう乗り切るか。そこが重要になります」

 

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