0‐7の処方箋(J論)

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

藤井雅彦コラム「居酒屋で胸を張るために」+富澤清太郎インタビュー

【目次】

ヘッドラインコラム

voice of players(DF 27 富澤 清太郎)


 

 

居酒屋で胸を張るために

  6日のサンフレッチェ広島戦が終わった翌7日から、マリノスタウンの駐車場出入口付近に横断幕が掲げられた。

練習前と練習後、車を運転する選手たちはしっかり視界に捉えていたはずだ。

写真を見ても分かるように、2007年のリーグ戦における対戦成績は1勝1敗。あろうことか最初の横浜ダービーで敗れたのはマリノス。その許し難い事実が、サポーターを前のめりにしているのは容易に想像できる。2度目はきっちり勝利したが、屈辱を繰り返すわけにはいかない。

だからこそ、リーグ戦で3度目のダービーを見たかった。

 

舞台がリーグ戦であれば、クラブはもちろんサポーターにも準備期間が設けられ、各方面から大々的にPRできたはず。

前日の時点でチケットがあまり売れていないという報を耳にすることもなかっただろう。

また、ホーム&アウェイで2回戦う形式も盛り上がるファクターとなり、それは2007年の一連の流れを見ても明らかである。そもそも天皇杯の主催は日本サッカー協会で運営は各都道府県サッカー協会(あるいは市サッカー協会)に担う。つまりクラブ管轄ではないため、主導権を握ってPRしにくい。

今回の戦いが脳裏に深く刻まれるのは、想像したくもないがマリノスが負けたときのみ。つまりジャイアントキリングが達成されたときのみだ。当たり前のように勝ったとき、天皇杯3回戦はただの通過点で、後世には伝え残らないゲームとなる。

大会や形式に関係なくダービーは特別で、負けたら終わりという意味ではトーナメント戦である天皇杯のほうがプレッシャーや興奮度は高まるかもしれない。しかしながら、天皇杯の特性である異なるカテゴリーの対戦という特異性を無視するわけにもいかない。

また、樋口靖洋監督の「ダービーというよりもACLにつながる戦い」という言葉には賛同せざるをえない。マリノスにとっては、天皇杯3回戦の相手云々よりも、トーナメント表の頂点に立って来季のACL出場権を獲得することのほうが大切だ。現場、つまりチームとしてのスタンスはそうでなければいけない。リーグ戦での3位以内が厳しくなったこのタイミングで、対戦相手との因縁や確執に一喜一憂する必要はない。

そうでなくても『横浜ダービー』というフレーズにまったく意に介さない選手は多い。サポーターが過剰反応していると、敬遠しがちな視線を向けることすらある。実はこちらの考えが選手の過半数を占めており、彼らは相手に興味がない。何もダービーに限った話ではなく、リーグ戦やナビスコカップで因縁めいたシチュエーションがあってもそうだ。古巣戦、元チームメイトが対戦相手にいる試合といった場面にも当てはまる。

実際、同じ横浜に籍を置いていても、両チームの選手が関わる機会は皆無に等しい。前述したようにカテゴリーさえ違うのだから、リーグ戦で顔を合わせる場面もない。それなのに敵対意識を持てというほうが無理難題だろう。マリノスとフリューゲルスの吸収合併騒動を知っているならば話は違うだろうが、そういった経歴の選手もいない。だからダービーという意識が稀薄でも仕方ない。

富澤清太郎のようなタイプは稀だ。

ダービーでこそないが、ヴェルディで育ち、マリノスとの『クラシコ』を知っているという背景もあるだろう。加えて言うならば、彼は常に“熱い”

腰痛の影響で試合出場は微妙だが、それでもサポーターの行動をしっかり受け止め、「横断幕を出しているのは彼らなりの表現方法だと思う。僕たちはそういった人たちに支えられている。そのことを背負って戦う」と粋に感じていた。残念ながら少数派ではあるが、気持ちを高揚させている選手もいるという事実をサポーターに知ってほしい。

そもそもダービーはまず周囲が盛り上がらなければ始まらない。

本来、先陣をきるべきはクラブの役目だろうが、今回の場合はサポーターだ。次に当事者であるチームや選手とつなげる役目をメディアが担う。その過程で選手を利用すべきで、昭和のプロレスのように挑発まがいの言動やアクションをするのも効果的だ。その適任者である栗原勇蔵が不在なのは痛すぎる。

誤解を恐れずに言えば、2007年の横浜ダービー第1章はすばらしい形で終わった。格下が先勝し、次の対戦で格上が力を見せつけた。一度負けたからこそ、もう負けられないという意識が強く芽生えた。だから、今回もサポーターは熱くなる。

明日の戦いは横浜ダービー第2章だ。

パッション溢れる刺激的な戦争を期待したい。試合後の居酒屋でトリコロールが胸を張れる結果になることを強く祈る。

 

【voice of players DF 27 富澤 清太郎 -横浜FC戦にむけて-】

結果を出すことがプレーヤーとしての義務

 

――富澤清太郎にとって『ダービー』とは?

「ダービーはサポーター同士がすごく意識しあうもの。だから、すごく白熱する一戦になる。いま、横浜でダービーがあるとしたら天皇杯しか機会はない。それも毎年あるとは限らないことが、今年はある。一つのお祭りごとのように盛り上がればいい。個人的には横浜ダービーは初めての経験なので、試合に出られるならすごく楽しみ」

――やりづらさ、難しさは?

「選手はピッチに入ったら普段どおりのプレーを求められるし、そうでないといけない。でも自分たちを支えてくれている人たちの思いを背負って戦わないといけない。そこで結果を出すことがプレーヤーとしての義務」

――サポーターの熱を感じる?

「毎日、弾幕を出してくれている人もいる。絶対に勝ちたい、絶対に負けるな、という気持ちをああやって表現しているんだと思う。人間なら、どこかで恥ずかしいという気持ちもあるはずなのに、ああやって行動をとっている。繰り返しにになるけど、そういう気落ちを背負って戦いたい」

――それは選手たちの総意?

「選手の中には、弾幕とかあんなことしないでほしい、という選手もいるかもしれない。でもオレは違うと思う。なんで自分たちがプロサッカー選手でいられるかといえば、支えてくれる人たちがいるから。そのことを忘れてはいけないし、それはプロじゃないと思う。まぁ、自分はすべてポジティブに考えるタイプだから(笑)」

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ