「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「マムシ」の愛称で親しまれた小椋祥平は、プロサッカー選手を引退してからどんな道を志したのか [トリコロールを纏った男たち :小椋祥平インタビュー(vol.1)] 無料記事

 

トリコロールを纏った男たち
インタビュー・文:藤井 雅彦

 

名前は小椋祥平。

マリノスに2008年から2014年まで7年間在籍し、ボール奪取能力を武器に中盤の底で存在感を示したボランチである。

そんなボールハンターは2019シーズン終了後、静かにスパイクを脱ぎ、現在はセカンドキャリアで汗を流している。

トレードマークの髭はいまも健在だ。

“マムシ”の愛称で親しまれた男は、プロサッカー選手を引退してからどんな道を志したのか。

全3回にわたって掲載するインタビューの第1回を無料公開する。

 

 

 

――2020年1月に引退を発表し、もうすぐ1年半が経過します。銀座でサロンをオープンしたのですね。

「2020年の9月8日にトータルリカバリーサロン『Re:room』をオープンしました。その日が自分の誕生日だったのと、あと休養(キューヨー)の日で語呂が良かったので(笑)」

 

――トータルリカバリーサロンとは?

「現役時代、練習と試合とリカバリーはワンセットのサイクルでした。それは今の時代も変わっていないと思います。でも引退してから、ふと考えてしまいました。『リカバリーってなんだ?』と。それで自発的にインターネットでいろいろ調べて、気がついたらその世界に興味を持っている自分がいました。アスリートとしての経験を生かして何かできることがあるんじゃないかなと思い始めたんです」

 

Re:room 公式サイトより

 

 

――具体的にはどのようなサービスを提供しているサロンなのでしょうか?

「疲労は、身体的疲労のほかに精神的疲労や脳疲労といった種類があります。その3つの疲労に効果的な方法として、酸素カプセルとパワーナップという手法にたどり着きました。酸素カプセルについては知っている人も多いと思います。ベッカムのケガを回復させたアレです(笑)。パワーナップは造語で、パワーアップという言葉と、うたた寝を意味するナップという単語がくっついたようです。この2つのサービスをサロンで提供しています」

 

 

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――疲労回復を目的としたサロンなのですね。

「日本は睡眠負債大国と言われていて、世界で一番眠っていない国らしいです。特に昨今は新型コロナウイルスの影響で生活リズムが変化している人も多いと思います。そういった人たちに疲労を回復させて、少しでも笑顔になって帰ってもらえたらうれしいです」

 

――オープンからもうすぐ10ヵ月が経ちます。お店の調子はいかがですか?

「順調とは言えませんね(笑)。手探りでスタートしたことに加えて、今年に入ってからは緊急事態宣言の期間も長かった。ビジネスマンがオフィスに行かなくなると、この営業形態は難しくなってしまいます。でもいろいろなことを経験しないと語れないこともあるし、出会えなかった人もたくさんいます。前向きにやっています」

 

 

 

――経営の難しさを痛感しているのですね。

「僕はサッカー選手が一番シンプルで簡単だと思いますよ(笑)。サロンはもうすぐオープンから1年経つので、そろそろ結果を残さなければいけません。サポーターに頼ってばかりではいけないのですが、いろいろなチームのサポーターが来てくれています。その中でも特にマリノスサポーターがたくさん通ってくれているのは本当にありがたいことです」

 

――サポーターと近い距離で接してみた感想は?

「皆さんそれぞれに小椋祥平のイメージがあるんでしょうね。接してみたら意外とフランクというか、よくしゃべるのでビックリされることが多いです(笑)。話題としては、それぞれの方が応援しているチームの結果について話をしますね。応援しているチームが勝った時は自然と笑顔が出て楽しい会話になるし、負けていたらちょっと元気がなかったりするので、なんとかして励ましたり」

 

――定期的にフットサルを開催して交流を深めているとか。

「来店してくれたマリノスサポーターをきっかけに輪が少しずつ広がっています。3月に初めてフットサルをやって、6月に2回目をやりました。自分がお店にいて話せば喜んでくれるけど、一緒にボールを蹴るのが一番うれしいのかなと。久しぶりに運動したら全然動けなくて、すぐに肩で息をして大変でした(笑)」

 

 

 

――SNSで元チームメイトと絡む機会もありますね。

「(栗原)勇蔵くんや(下平)匠とインスタライブをやりました。チームメイトだった時とは違った感覚で楽しんでいます。今だから話せることもあるし、シンプルに楽しいです」

 

――先日、下平匠選手が来店していました。

「マリノスで一緒にプレーしたのは2014年だけで、プライベートですごく仲が良かったわけでもありません。自分は現役を引退したけど、匠はプロから一線引いた南葛SCという場所でサッカーを続けています。それぞれの立ち位置で助け合えることがあればと思って、練習ユニフォームの個人スポンサーになりました。スポンサーになるという経験はなかなかできないですし、いい経験かなと」

 

@reroom.0908##南葛SC ##下平匠選手 ##29番 ##リカバリー ##疲労回復 ##パワーナップ ##酸素カプセル ##銀座 ##ginza♬ SUNNY DAY – Matteo Rossanese

 

 

――ユニフォームと言えば、サロンには所属していたクラブのユニフォームが飾ってありますね。

「所属チームすべてではないのですが、実家に保管してあったユニフォームを飾りました。これまでの人生で一度もユニフォームを飾ったことはなくて、飾る場所もありませんでした。でもサロンでは、お客さんが自然と写真を撮れる場所を作りたかった。初めて有効活用できました(笑)」

 

 

 

――その中でマリノスは今も気になる存在ですか?

「もちろん気になります。だって一番長く在籍したチームですから。優勝した2019年は自分も現役選手だったので『おめでとう』という感覚より、ちょっと悔しい気持ちがありました。そういう気持ちがなければ現役ではやっていけないと思うので」

 

――チームメイトとしてプレーした選手も在籍していますね。

「(水沼)宏太、アマジュン(天野純)、キー坊(喜田拓也)、あと高野は甲府で一緒にプレーしました。キー坊は当時まったく試合に絡めなかったのに、今は立派なキャプテンですね。アマジュンも正直ここまでの選手になるとは思いませんでした(笑)。宏太はいろいろなチームを経験してすごいいい選手になりました。遼は写真で見るかぎり筋肉がひと回り大きくなったかな。『お前に足りないのはそこじゃないだろ』と言いたい(笑)」

 

 

 

(vol.2につづく)

次回以降は、マリノス在籍時代の昔話を中心にインタビューを行った。

ピッチ内だけでなくプライベートに至るまで、横浜F・マリノスが小椋祥平に与えた影響とは。そして印象に残っている選手や監督、記憶とは――。

引退した今だから話せる赤裸々な過去にご期待いただきたい。

tags: 小椋祥平

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