「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

実質的な開幕戦と見るべきだろう [J1第2節清水戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,772文字-

 

第2節、日本平、そして清水エスパルス。思い出すのはちょうど1年前の出来事である。ホーム開幕戦を勝利して臨んだ試合で、マリノスは清水に5-0の大勝を収める。中村俊輔の直接CKをきっかけに兵藤慎剛のビューティフルゴールで追加点を挙げる。トドメはマルキーニョスのハットトリックだ。開幕直後で新戦術が浸透していない清水を完膚なきまでに叩きのめした。今回、試合結果こそわからないが、試合前時点でのシチュエーションは1年前と酷似している。日程の妙といえばそこまでではあるが…。

4-2-3-1_開幕と 違いを挙げるとすれば、マリノスが公式戦をすでに3試合消化している点だろう。その内訳は1勝2敗だ。Jリーグ開幕となった大宮アルディージャ戦こそ完勝を飾ったが、それまでに2連敗した。マリノスの開幕は多くのチームよりも1週間早く、前号でも述べたように当事者の選手たちは負け越しの感覚を持っている。富澤清太郎は現在の心境を「勝ったけどスッキリしない」と曇り気味の表情で語る。それこそ大宮は戦い方が定まっていなかっただけで「参考にならない勝ち」(栗原勇蔵)か。実質的な開幕戦はこの清水戦と見るべきだろう。

その一戦を目前に控えたマリノスに油断や慢心はない。理由は前述しているように公式戦トータルで負け越していること、あるいは勝利したとはいえ大宮の出来が悪かっただけ、という2点である。機能性を発揮したように見えても、それが本当の力と断定するのはまだ早い。例えば移籍後初ゴールを決めた藤本淳吾と伊藤翔にしても、ゴール以外の場面での貢献にはまだまだ向上の余地を残している。藤本自身も「(出来は)まだまだ。結果が出たのは良かったけど、それを続けていかないといけない」とすでに次を見据えている。

 

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清水4-2-3-1 大宮と比較したとき、清水はそれなりの完成度を誇るチームといえる。「去年のこの時期の清水とはまったく違う」と樋口靖洋監督。たしか昨年の今頃はトリプルボランチを採用し、試行錯誤していた。今季はそういった奇抜な試みはなく、攻撃面で前線にツインタワーを設置するにとどまった。もともと早めのクロスを得意とするチームが、さらにその傾向を強めたといっていいだろう。ノヴァコヴィッチと長沢駿はハイボールに強く、ここでの攻防が勝敗の分かれ目だ。

とはいえ単純な競り合いで中澤佑二と栗原勇蔵が簡単に負けるはずがない。大宮戦では二人でラドンチッチを完封した。ターゲットが二つになるという手間はあるものの、ここで負けていてはマリノスに勝利の凱歌は上がらない。中澤は「僕と勇蔵は仕事が多くなる」と覚悟を決めている。両CBと榎本哲也の集中力さえあれば、相手のストロングポイントを押さえ込むのは難しい作業ではない。

すると次の焦点はセカンドボールの行方か。中村俊輔は「セカンドボールやルーズボールの攻防が大事になる」と予想する。競り合いで完璧にはね返せなかったときの処理を怠れば、開幕戦で清水と対戦した名古屋グランパスのように失点してしまう。したがってダブルボランチや両SBのケアが欠かせない。

ほかに不安材料は見当たらない。伊藤と藤本に前節同様のビューティフルゴールを期待するのは酷だが、あれで本当の意味で仲間入りを果たしたことも事実。もちろん中村や齋藤学も健在で、攻め手は豊富な状態にある。スタメンはもちろんのこと、帯同メンバー18人は大宮戦と変わらないが、ベンチには兵藤や矢島卓郎といった有効なカードも控えている。

前節からのインターバルも1週間あり、コンディション面にも不安はない。勝って2連勝になればゼロックス杯や全北現代戦での敗戦を忘れられる。2連勝でアジアチャンピオンに挑戦したい。

 

 

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