「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

本音と建前の「ターンオーバー」 [ACL2節広州戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,644文字-

 

11日、マリノスはACL前日練習を非公開で行った。報道陣に公開されたのは冒頭15分間のみ。その内容は何の変哲もないウォーミングアップで、そこから多くを語ることはできない。

だが、樋口靖洋監督が何人かのメンバー変更を考えているのは間違いない。

「コンディションが最優先。週末のリーグ戦も見据えながら、ターンオーバーできるところはしていきたい。そのための補強であり、チーム編成でもある。ほとんどの選手がプレーできる状況なので、その中でいくつかのポジションは思い切ってターンオーバーして勝ち点を獲りにいきたい」

4-2-3-1_ACL 察するにコンディション不良の選手を強引に起用する考えはないようだ。例えば、清水エスパルス戦の2日後に右アキレス腱痛を訴えた藤本淳吾は先発から外れる見込み。左足首ねん挫で離脱している藤田祥史はすでに全体練習に合流しているものの、まだ先発復帰できる状態にはない。ほかには右ひざ痛のドゥトラ、あるいは8日の練習中に脳震とうを起こしてしまった飯倉大樹は試合に間に合わない。

彼らを除くメンバーに関してはコンディションが整っている。選手層を考えれば多少の入れ替えが可能かもしれない。リーグ戦開幕後の2試合を見ても、ベンチには兵藤慎剛や小椋祥平、ファビオといった実力者が控えている。彼らはスタメンでピッチに立っても与えられた仕事を完遂できる面々だ。

広州恒大戦は5連戦の2試合目にあたり、週末には中2日で徳島ヴォルティス戦、さらに中2日でメルボルンへと飛んで試合を行う。徳島戦がホームゲームなのは幸いだが、中2日の連戦はたしかに厳しい日程だ。どこかでひと息入れる必要はある。特に消耗度の激しい選手は休ませたいというのが本音だろう。

ただし、この試合を落とせばACLのグループリーグは2連敗スタートとなり、決勝トーナメント進出の可能性が極めて低くなる。指揮官は2位以内に入る条件として勝ち点10を目指しているようだが、それに到達するのも困難になる。残り4試合で3勝1分以上の成績が求められるのだから、アウェイの広州恒大戦で勝ち点獲得が義務付けられるということ。もちろんメルボルンや全北現代には勝利が必須だ。

 

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筆者はリーグ戦とACLにプライオリティーをつけるべきという考えではない。リーグ戦が「最も疎かにしてはいけない大会」(中村俊輔)であると同時に、ACLは9年ぶりに立つアジアの舞台だ。そこで存在価値を示すことにはクラブにとっても意義がある。消化試合にならない限りはACLも全力で戦うべきだ。試合前日、樋口監督に「ACL初戦の敗北、あるいはリーグ戦2連勝によってプライオリティに変化はあるのか?」と質問したところ、「プライオリティは変わらない」と公言した。

本音と建前とはまさにこのこと。栗原勇蔵や富澤清太郎抜きのチームは本当に主力メンバーと言えるのだろうか。勝っている限りはよほどのことがないかぎり編成に手を触れない指揮官が、あえてメンバー変更を決断した。これはある意味で異常事態である。勝利や出場選手の奮起を期待する以上に敗北への不安が大きい。入れ替えで入った選手が力を発揮できる保証はなく、しかも相手はアジアチャンピオンである。組織以前に個の能力に屈してしまえば、チームとしての機能性など見る余地もない。

思い切ったチャレンジをすべきは、はたして本当にいまなのか。ここは後先考えず全力投球し、その結果を考慮して来週のメルボルン遠征で異なる編成をすればいいと思うのだが。勝敗とは関係なく、落とし穴が待っていないことを願うばかりである。

 

 

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