「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

アジアのメガクラブの力はおそらくホンモノ [ACL広州戦レビュー] (藤井雅彦) -1,456文字-

 

あるサッカー関係者はこう言った。

「広州恒大はコンディションが悪かったみたいだ」

そうなのだろうか。そうかもしれない。だとしたら、なんだというのだろう。イタリア人指揮官のマルチェロ・リッピ監督は「リーグ戦も含めてタイトな日程が続いている」と話したようだが、それも言い訳にしか聞こえない。過密日程はマリノスとて同じこと。Kリーグのようにリーグや組織が全面的に協力してくれるわけではないのだから、クラブの総力で乗り切るしかない。

4-2-3-1_ACL 昨年、同じACLの準決勝でJリーグから出場していた柏レイソルは広州恒大に2試合合計8-1で敗れた。チームも状況も違うため一概に比較はできないが、そのスコアが広州恒大の攻撃力を日本のJリーグファンに印象付けた。だからこそ当時と昨日を比較して冒頭のコメントになったのだろう。広州恒大は柏に大勝した当時の状態ではなかった、と。

失礼な話だ。マリノスとレイソルは違う。黄色にはない守備の強さと伝統がトリコロールにはある。ディアマンティの技術の高さとムリキのスピードはJリーグではなかなかお目にかかれないレベルだった。それを直接FK一発だけに抑えられたのは、マリノスだからこそではないか。ムリキをほぼ完璧に封じ込めた小林祐三は胸を張って言う。

「勝ちたかったという気持ちになれるのは、ウチがまず相手の攻撃をある程度抑えられたからという誇りがあるから」

 選手は皆、「勝ちたかった」「勝てる試合だった」と話したが、簡単に勝てる相手ではなかったことも事実として受け止める必要がある。シュート本数で上回りながらもチャンスの数そのものは広州恒大のほうが多かった。その中で端戸仁が貴重な先制ゴールをもたらし、中村俊輔や齋藤学の力を生かしてチャンスを創出した。だが、その前提として守備陣の頑張りは無視できないものだった。

 

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中澤佑二はファビオとともにゴール前をしっかり固めた。「相手は一発のある選手が揃っていた。90分のうちの1分間で仕事をすればいいという感覚だったと思う」(中澤)という相手に対して、一瞬でも隙を見せればやられてしまう。ファビオをうまくコントロールしながら最も危険なエリアを守る術は、残念ながら栗原勇蔵にはまだできない。ファビオ自身も自慢の身体能力を生かして、前でボールを奪い、空中戦も制した。

リーグ戦からのメンバー変更には懐疑的なままだが、出場した選手たちはそれぞれが持ち味を発揮した。前出の端戸やファビオ以外にも、小椋祥平は中盤でボール奪取能力を発揮。集中した守備でチームを引き締めた。兵藤慎剛は前半終了間際の負傷交代が残念だが、それまでは高い位置で相手ディフェンスラインのギャップを突く動きを見せた。

チームは総力を上げて勝ち点1をもぎ取った。最良の結果とは言わないが、マリノスらしさは存分に発揮したように思う。その上での勝ち点1獲得はJリーグ全体に誇れる結果だ。相手は間違いなく強かった。年間の強化費が100億円以上とも言われるアジアのメガクラブの力はおそらくホンモノ。そのチームを相手に勇敢に戦ったマリノスを担当記者として誇りに思う。

 

 

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