【サッカー人気5位】2位・名古屋相手に被シュートゼロの“完…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

気づかせてくれた甲府に感謝しなければならない。 [J4節甲府戦レビュー] (藤井雅彦) -2,157文字-

 

理想を掲げるのは決して悪いことではない。狙いとするスタイルがなければ進捗状況を計れず、成長もない。ヴァンフォーレ甲府のように守備時に[5-4-1]のブロックを作って守るチームを能動的に崩せたら最高に気分がいいだろう。後ろからテンポ良くパスをつなぎ、ワンタッチやツータッチを織り交ぜながら、局面では効果的にドリブルを使う。たった一つのボールに何人も選手が関わり、先手を取ることで相手を圧倒する。詳しい狙いやグループ戦術を語ればキリがなく、いまのマリノスが目指しているスタイルを分かりやすく言うと、こういったことだろう

4-2-3-1_佐藤兵藤 樋口靖洋監督就任以降は一貫してそのスタイルを体現しようと試みている。そこにブレはない。その結果として何度でも映像で観たくなるようなゴールシーンも生まれた。昨季の天皇杯準決勝・サガン鳥栖戦での兵藤慎剛のゴール、あるいは先日のJ1第3節・徳島ヴォルティス戦における藤本淳吾のゴールもそうだ。相手がある程度、守備の枚数を揃えた状態でも、主体的なアクションで切り崩してフィニッシュへと持ち込む。サッカーを知らない人もサッカーが好きになる。これこそが究極の娯楽である。

とはいえ毎試合のように美しいゴールが生まれるわけではなく、チームに所属している全員がそれをできるわけでもない。むしろ特定の限られた選手にしか、そういったゴールは演出できない。だからその選手を欠いた瞬間に、チームスタイルは意味を成さなくなるという見方もできる。サブメンバーやメンバー外の選手まで含めて相手守備陣を崩すサッカーをするなど、夢のまた夢だ。選手間には能力差があり、できることとできないことがある。それを補完し合ってこそ成り立つのがサッカーチームなのだ。

甲府戦のピッチに藤本淳吾と齋藤学がいなかった。前者は以前から頭を悩ませている右アキレス腱の痛みが出たため遠征メンバーに帯同せず、後者は左ふくらはぎの状態が芳しくないためベンチスタートとなった。彼らは2列目に陣取るレギュラープレーヤーというだけでなく、ゲームを能動的に動かせる選手たちだ。藤本はボールに関与しながらランニングでスペースへ飛び出せる。齋藤はもちろんドリブルで相手を引きつけ、マークを分散させ、個で試合を決める。試合を動かすという点において、彼ら以上の選手はマリノスにいない。

 

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だから二人を欠いたマリノスの攻撃が停滞するのはある意味で必然なのだ。ピッチコンディションが相当悪かったことも影響しているが、前半はまったく何も起こらなかった。甲府の守備ブロックの外でボールを回しているだけで、リスク覚悟の縦パスやスペースを狙ったパスはほとんどない。もちろんドリブルで単独打開を図る選手もいない。かといった早めのロングボールで押し込み、そこからのセカンドボールを拾う考えもない。甲府もリスクを冒して攻めてくる気は毛頭ないようで、最前線のクリスティアーノ頼みであることは明白。すると試合全体として膠着する。マリノスは前半シュート0本に終わった。

甲府3-4-2-1 ただし、その是非を問うのは難しい。例えば富澤清太郎は「サッカーは90分の中で決着をつけるスポーツ」と語る。したがって半分の45分間で何も起こらなくても、過度に慌てる必要はないと考えているのだろう。いつも理想のサッカーができるわけではなく、相手あっての試合だ。我慢や忍耐も必要であろう。まずは不用意なミスを避けて被カウンターを許さない。そういったサッカー観もあるのだから、甲府戦の前半45分を低調という一言で片付けるのは安易である。

問題はそれがチーム内で意思統一されていないこと、あるいは指揮官がそれを良しとしていない点にある。試合後の樋口監督の言葉がすべてだ。

「焦れないことは大事だけど、仕掛けることも大事。前半は焦れないことが頭にあって、後半に動かせばいいという考えがあったように思う。自分たちからゲームを動かせと話した」

 明らかに前半の内容に不満を抱え、ハーフタイムに修正を促している。だが、チームの中心人物たちは必ずしも同じ意見ではない。「相手も勝つために必死にやっている」と富澤。甲府を下に見ることは一切せず、同じJ1という土俵で戦うライバルという認識がある。対して、指揮官には少々の驕りがあったかもしれない。残念ながらあのメンバー構成で華麗に崩せるほど、マリノスは強くない。スタイルを追求するあまり、最終目標を見失ってはいけない。次に向けてすべきは、理想を追い求めつつも、勝つために現実を見据えること。気付かせてくれた甲府に感謝しなければならない。

 

 

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