「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

個人的な思いをぶつけるため、試合翌日に樋口監督を直撃した [J7節仙台戦レビュー] (藤井雅彦) -1,995文字-

 

まずは直接の敗因から。「セットプレーはもう一度締めないといけない」という中村俊輔の言葉どおりだろう。ベガルタ仙台はマリノス同様にセットプレーをストロングポイントにしているチームで、右足のキッカーとしてJ屈指のレベルを誇るリャン・ヨンギがいる。マリノスと対戦するチームがいつも警戒するのと同じように、まずは簡単にセットプレーを与えてはいけないのだ。

4-2-3-1_兵藤 それなのに1失点目は相手のスローインからの流れでCKを献上し、2失点目は途中出場の富澤清太郎が強引な体勢で競り合ってFKを与えた。そういった場面でミスは重なるものだ。1失点目は得点者の赤嶺真吾へのマークが甘かった。マリノスはセットプレー時にマンマークで対応しており、赤嶺担当は下平匠だった。犯人探しするつもりは毛頭ないが、マンツーマンには責任の所在を明確にするという狙いもある。「僕がマークを外してしまったので反省しないと」と言葉を振り絞った下平は反省を次に生かさなければいけない。

2失点目も、まず石川直樹にヘディングシュートを許しているが、こちらのマーカーは小林祐三だった。身長はさほど高くないが競り合いに強さを発揮するタイプだけに誤算である。シュートのコースそのものは決して難しい類ではなかったが、ボールには観戦者にはわからない強烈な回転がかかっていたようだ。キャッチにいった榎本哲也の手を弾き、こぼれ球を詰めたのがまたしても赤嶺だったということ。

攻撃に関しても落ち度がなかったわけではない。伊藤翔は16分と58分にそれぞれ開いて最終ラインの背後を突き、GKとほぼ1対1の場面を迎えている。しかしシュートを決められなかった。前節・アルビレックス新潟戦でも絶好機にバーを叩いたように、決めるべき場面を外すと試合には勝てない。そのほかの場面で例えば献身的な守備は光るだけに、あとはゴール前での決定力をいかに高められるか。チャンスはあるのだから決めてもらうしかないだろう。

 

下バナー

 

以上のように攻守両面で敗因は存在する。しかし、それ以上に気になるのは選手たちがピッチ上で躍動していないことだろう。樋口靖洋監督は「躍動感のあるチームにしたい」と理想を語っているが、いまはそれができていない。不安や迷いが先行し、勇気ある一歩を踏み出せていないように見える。精気や覇気も感じられない。抽象的な言葉ばかりを並べたが、いまチームが抱える最大の問題はサッカーを楽しめていないことに尽きる。

仙台4-4-2 昨季は悪いなりにも勝てるチームだったが、今季はそれができていない。すると取り巻く空気は悪くなる一方で、突破口をまったく見出せない。結果だけでも内容だけでもいけないとはいえ、ここまでは結果がいかに重要かを痛感させられるシーズンになっている。勝ちなしの状況が続くとストレスが溜まり、それはチームを良い方向には導かないものだ。

個人的な思いをぶつけるため、試合翌日に樋口監督を直撃した。余談だが、チーム状態が下降線なときでも、常に真摯に対応してくれる指揮官はJ全体を見渡しても少ない。

「やりきった感がない。ウチがいいときのスタンダードとくらべると6~7割くらい。選手はやっていないのではなく、できていない。その要因の一つにコンディションがあるかもしれない。でもウチはACL出場を目標にしていたのだから、それを言い訳にはできない。あとはメンタル的な疲れもある。それによってエンジョイ感がない。躍動感がないとウチのサッカーはできない。結果はもちろん残念だけど、ピッチに躍動感がないのが歯がゆいし、悔しいし、申し訳ない。まずは自信と勇気を持ってピッチに送り出すことを考えたい。何かのきっかけで一変させることもできるはず。監督もスタッフもキャプテンも選手もそれぞれが考える。いまこそチームスローガンの『ALL FOR WIN』が必要になる」

発する言葉に力がないわけではないが、確たる要因を見つけられていないのかもしれない。だとすれば立て直すのは非常に難しい作業になる。特に個性の強い選手が揃うチームをまとめるのは想像以上に大変だろう。しかし、樋口監督はその仕事を避けて通れない。これから中2日と中3日で続く連戦の中で、いかにしてチームを再建するのか注視していきたい。

 

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ