「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

4チームすべてに突破の可能性 [ACL6節広州戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,708文字-

 

「大事な決戦」

来たる広州恒大とのアウェイゲームを2日後に控え、樋口靖洋監督はそう言い切った。

9年ぶりに出場するACLで、マリノスは序盤に躓いた。初戦の全北現代戦で0-3と完敗すると、その試合を含む前半3試合で1勝も挙げられず、ホームで広州恒大と引き分けて勝ち点1を得るのがやっとだった。グループ内で最も力が劣るかに思われたメルボルン・ビクトリーにもアウェイで敗れ、グループリーグ突破は極めて厳しい状況に追い込まれた。

4-2-3-1_兵藤 しかし、折り返したあとの第4節と第5節にホームで連勝を飾る。すると前年度王者の広州恒大がまさかの2連敗を喫したことで勝ち上がりの行方は混迷を極めた。その結果、4チームが同じ勝ち点で並ぶという空前絶後の展開に。最終節を残して4チームすべてに突破の可能性があり、4チームすべてが敗退の危機に瀕している。

その中でマリノスは最も不利な状況にある。得失点差が響き、最終節で勝利しなければグループリーグ突破はならない。引き分けでは得失点差で敗退が決まってしまう。「引き分けも得失点差もない。勝つしかない」(樋口監督)。大量得点も完封も必要ないが、とにかく勝たなければ上のステージには進めない。

言わずもがな最低でも1得点が絶対条件となるわけで、その上で肝要なのは守備と強調したい。ホームで対戦した際は1-1の引き分けに終わったが、隙あらばゴールを狙うスタンスの相手アタッカー陣は脅威だった。直接FKを決められたディアマンティや左サイドに位置するムリキ、あるいはエウケソンらをストップしなければ勝機は巡ってこない。残念ながら彼らと打ち合って勝てるほどマリノスは攻撃力に秀でたチームではない。まずは我慢の展開を覚悟の上で、前半を無失点で折り返したい。

 

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セットプレーやラッキーゴールで先制できれば言うことはないが、問題はそれができなかった場合である。いかにして得点を奪うか。昨日も書いたように直近のリーグ戦では5試合でわずかに1得点しか挙げられていない脆弱ぶりである。ことACLに関しては複数得点が続いているものの、全北現代戦については齋藤学のスペシャルなゴールがなければどうなっていたか分からない。

そもそも攻撃や得点は水物なので、まずはゴールの可能性を上げる作業が必要だ。柏レイソル戦ではシステム変更せずに1トップと2列目の選手を入れ替えた。今度もベンチスタート濃厚な藤本淳吾については柏戦よりもコンディションが上がっていると信じたい。さらに攻撃の手を強める一手として2トップへのシフトが考えられる。全北現代戦の後半は2トップに変更したことで流れを引き寄せた。伊藤翔と藤田祥史がコンビネーションを構築する時間はいままで用意されなかったとはいえ、ここは彼らの好相性に賭けるしかない。中村俊輔には窮屈でもサイドMFを務めてもらうしかない。

指揮官には普段以上に迅速かつ正確な判断と決断が求められる。動くべきか、動かないべきか。動くならば、誰をどのように投入し、配置をどうするか。もちろん試合に臨むメンバーも考える余地がある。伊藤と藤田のこちらをスターターとして起用するかは最初の見どころで、柏戦での藤田起用はその伏線とも考えられる。確定的なのは左SBが下平匠ではなくドゥトラになることだけである。

この最終節まで望みをつなげられた一因に幸運もあったとはいえ、まずは素晴らしい。しかし、それだけで終わってはいけない。相手は間違いなく強く、環境も劣悪だろう。その中で何ができるか。富澤清太郎は「Jリーグではなかなか経験できないゲームになる。でも経験するだけではなく、いかにして勝ちに行くか」と息巻く。完全アウェイの地でマリノスに凱歌が上がる瞬間を是非とも見たい。

 

 

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