「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

水沼が右足を一閃し、ゴールショーを締めくくる。 アタッキングフットボールが息を吹き返した [J35節 FC東京戦レビュー] -無料記事-

 

エウベル、前田、仲川の3トップに既視感

 

戦略面での勝因を挙げるとすれば、前田大然をストライカーポジションで起用したことに尽きる。

その狙いをケヴィン・マスカット監督が「自分はいつもベストのコンビネーションを求めている。前田をあの位置に置いたのは中央からの突破も期待できるし、周りへのサポートもできる」と明かし、前田自身は「相手のディフェンスラインが高めなのでどんどん裏へ抜けて行こうと思っていた。やっぱり前(ウイングではなく中央)のほうが自分はやりやすいけど、それはチームが決めること。与えられたポジションでしっかり結果を残せて良かった」と頷いた。

 

 

 

左右にエウベルと仲川輝人というスピードだけでなく打開力やチャンスメイク能力に秀でたウイングを配置し、中央に圧倒的なスピードと得点能力を持つ前田。今シーズン初となる組み合わせが猛威を振るい、特に先制点は仲川の粘りと前田のスプリント能力がなければチャンスにすらなっていなかった。

 

どこか既視感を覚える最前線の並びは、優勝したシーズンの左・マテウス、中央・エリキ、右・仲川の構成に近い。攻守両面で総力を前面に押し出し、チームの肝であるアグレッシブさを体現する。そんな狙いが見て取れた。

その3トップを後方からサポートする中盤トライアングルも、マルコス・ジュニオールを扇原貴宏と喜田拓也が支える形に戻った。チームのために戦うことだけに注力できる選手たちを揃え、安定感が増した。

 

 

前半だけで4ゴールが生まれたのは相手のミスや退場によるところも大きいが、マリノスの勢いが完全に上回っていたことも事実。

アタッキングフットボールが息を吹き返した。

 

 

ラスト3ゴールは途中出場の水沼によってもたらされた

 

前半だけで大勢は決まったが、後半も攻撃の手をまったく緩めないところが現在のマリノスたる所以だ。

後半3分にティーラトンのクロスを頭で合わせた前田が今季2度目のハットトリックを達成。ストライカーポジションで起用された期待に満点以上の回答で応えてみせた。この好調ぶりならばワールドカップアジア最終予選でもおおいに期待できそうだ。

 

 

その後の3ゴールは途中出場の水沼宏太がもたらしてくれた。

途中出場から6分後の後半24分だ。高い位置からのプレスでボールを奪い、レオ・セアラを経由して水沼へ。シュートチャンスでもあったが、走り込んできた小池龍太を見逃さない。優しいラストパスがアシストになった。

 

 

後半39分には自慢のクロスがオウンゴールを誘う。戻りながらの難しい対応を迫られた相手選手は必死に足を伸ばしたが、水沼のクロスのキレが上回った。ゴールに吸い込まれたボールをすぐに手に取り、鬼気迫る表情でセンターサークルへ走ったマルコスの姿も印象的だった。

そして仕上げは自らのゴールだ。右サイドのスペースでボールを受けてドリブルで前へ運び、右足を鋭く一閃。強烈な弾丸ミドルはニアサイドを突き破り、8得点のゴールショーを締めくくった。

 

 

水沼や小池、あるいはマルコスのパフォーマンスが象徴するように、全員が最後まで足を止めなかった。マスカット監督が「選手たちが戦う姿勢やピッチ上での表現で素晴らしいものを見せてくれた」と賛辞を贈ったように、優勝の可能性が消えても何も変わらず自分たちのサッカーを完遂してくれたことに大きな価値がある。

ポジティブ要素満載の8得点大勝は、文句なしに今季ベストゲームだ。

マリノスを応援し、マリノスとともに生きる人間を幸せにしてくれた選手とチームに、感謝したい。

 

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