「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

決断が必要だ [J19節東京戦レビュー] (藤井雅彦) -1,750文字-

 

敗因から。

4-2-3-1_藤田 あの時間帯に、自陣でのありえないボールロストからカウンターを許したら守備陣はひとたまりもない。「いまのチーム状態であの時間に失点したら…」と栗原勇蔵が嘆くのも無理はない。ボールを奪われたのは中町公祐と富澤清太郎だったが、昨シーズンはああいっはシーンはなかった。チームのハンドルを握る彼らがあのようなミスを犯せば、チームは絶対に勝てない。もはや戦術や采配、あるいは相手の力などを語る以前の問題である。特に中町については、その後も半ば懲罰的にハーフタイムで交代させられても仕方のない出来だった。

栗原のコメントでも触れられていたように、決してよろしくないチーム状況にある。チームと選手は生き物で、負けが続けばどうしてもネガティブマインドが先行する。いまはまさにそういった状態で、失点による精神的ダメージは好調時と比べものにならない。失点によって下を向き、プレーは消極的になってしまう。だから立ち上がりの失点は絶対に防がなければならないのだが、かといって「慎重にプレーしろ」と指示するのはあまりにも後ろ向きすぎる。だから非常に難しいチーム状態なのだ。

とはいえ喫した失点が消えるわけではない。いかにして得点を奪い、同点に、あるいは逆転に持ち込むか。前半はチャンスらしいチャンスを作れなかった。この試合では対戦相手の性質を考えて中村俊輔と藤本淳吾のポジションを入れ替えたが、それも決定打には至らなかった。1トップに入った藤田祥史にしても個人で決定機を作り出せるタイプではない。左にいる齋藤学はいい形でボールを受けられずドリブル突破は不発に終わった。

 

下バナー

 

後半に入るとマリノスがわずかながら攻勢の流れに。伊藤翔を投入して2トップにシフトしたことがきっかけで、最近の公式戦で続いているように押し込むところまではいった。しかし今年のFC東京はイタリア人監督を迎えて現実的なサッカーを展開する。終盤には5バックにしてマリノスの攻撃をしのいだ。イタリア人にとっては後半のシュート数が0本に終わったことなどまったく気にならないのだろう。前半の1点を守りきって、まんまと勝ち点3を持ち帰ったのだから。

東京4-3-1-2 スタートから2トップにすれば攻撃が機能すると考えるのは安直すぎる発想だ。ただ、それ以上に[4-2-3-1]は機能していないようにも感じる。特に守備面で前線からプレッシャーに走れていない。その理由の一つに中村の運動量があるのだとしたら、システムや人選も再考の余地がある。藤田や伊藤は2トップタイプのFWであることは最近のゲームから明白になっており、2列目の人材もいないわけではない。さらに言えば、中村が不調ならばダブルボランチの人選にもさまざまなパターンが考えられる。

負けたという事象を抜きにして、この日の内容を良しとすべきか否か。敗因を冒頭で挙げたミス、あるいは相手の性質に求めるならばそれでいいが、そもそも機能性を欠いているとしたら戦い方を根本的に変える必要がある。しかし練習で修正する時間はない。次は中2日で浦和レッズとのアウェイゲームが控えている。戦術練習を行う余裕はなく、何かを変えるにしてもぶっつけ本番で試合に臨むしかないだろう。そこには当然リスクが伴う。

兵藤慎剛をベンチ外にしたのは指揮官の失策だが、それも含めて個々のモチベーションを上げるマネジメントが必要になる。その上でどういった戦い方を選択するのか。まずは結果を出さなければ、チームはさらにネガティブマインドに支配されてしまう。「FC東京に負けると、ずるずる行く可能性がある」。試合前に榎本哲也が危惧していた展開にしないための決断が必要だ。

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ