「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

【無料配信】「真ん中をやってみたい気持ちはある」 齋藤 学 スペシャルインタビュー【1】

齋藤 学 スペシャルインタビュー【1】

 

オリンピックから切り替えるのが難しかった

――自分がゴールから遠ざかっている現状をどう考えているの?

「ロンドンオリンピックが終わってから、まだ点を取っていないんですよね。帰ってきて最初の2試合(第22節・川崎フロンターレ戦、第23節・セレッソ大阪戦)はラストの何分しか試合に出られなかった。その次のFC東京戦からスタメンに戻って、リーグ戦が4試合、あと天皇杯があったけど、点を取れなかった。

振り返ると、自分が点を取る、取らないというよりも、チームが勝てないことのほうが悔しかった。特に大宮アルデージャ戦は勝たないといけない試合だった。守備陣が頑張って無失点で抑えてくれているので、前は取らないといけない。それはチーム全体のバランスの問題。鹿島アントラーズ戦は自分が点を取れなかった悔しさはあるけど、チームとしては良かったと思うし、そのために走れていたから良かった」

――では、自分自身のパフォーマンスについてはどう?

「ここ数試合は良くなってきたと思う。鹿島戦は運動量があったし、大宮戦も積極的にプレーできていた。ただ、それまで何試合か良くないゲームがあった。90分間の中で何かできていたかもしれないけど、継続して何かできたかという点では消えている時間も長かったから。

オリンピックから帰ってきて、変にバランスを意識しすぎていたかもしれない。もうちょっとワガママにやっていいところもあった。それは周りにも言われたし、自分でも思っていたこと。大宮戦はわざと守備に行かないで、相手を前に行かせなかったり、自分の役割を見つめ直すことができた。F・マリノスはオリンピック代表とは違うチームだし、役割をもっと考えないといけなかった」

――約1ヵ月も違うチームでプレーして、所属チームでのスタイルに戻すのは難しかった?

「代表では、求められているものが自分の良さだけではない。国際大会に勝つためにチームとして何ができるかというのが一つの形だった。だから帰ってきてからは難しかったかな。頭では分かっていたし、言葉にも出していたけど、実際のピッチに入ると切り替えるのが難しかった」

――帰ってきてスタメンで出られなかったこともバランスを崩す要因だったんじゃない?

「それは監督が決めることだから。ただ、個人的な気持ちでいえば、もちろん試合に出たかったし、出られなくて悔しかった。ロンドンではチームとしてはまずまずの結果を残せたと思うけど、スタメンではなかったので自分としてはモヤモヤしたものがあった。それをJリーグで晴らしたい気持ちは強かった。しかもチームが良くない状態だったので、その気持ちはさらに強くなったんだけど、自分も悪いほうに流されてしまった。自分が最初から出ていれば、というのはサッカーの世界では通用しない」

――ここへきて気持ちの面も切り替わってきた?

「やっと元通りに戻ってきたかなって。頭で考えていたことをプレーでもできるようになってきた。F・マリノスでの役割というか、自分の良さを出すということ。結果を残さないといけないポジションなのは間違いないから、早くゴールやアシストがほしいのはあるけど…」

――結果が出ることで気持ちもだいぶラクになるんじゃない?

「それは間違いない。でも、まずは大宮戦のパフォーマンスをしっかり継続したい。対面した相手に勝つこと。あとはボールを取られても何度も仕掛けていくこと。あの試合では前半から何度かファウルを受けていて、結果として相手に警告を出させて自分たちの数的優位につながった。とにかく仕掛け続けることが大事」

――小野裕二ともども、あとはシュートだけだったね。

「間違いないですね(苦笑)。ビデオを見直しても、相手が10人になったから、あのサッカーができたわけじゃない。11人対11人の時点で圧倒できていた。3~4点取って勝たないといけない内容だった。なんで今年はこんなに点を取れないんだろう…。J1とJ2でレベルの差を感じているわけではないですよ。実際にチャンスは作れているわけだから。去年取りすぎちゃったのかな(苦笑)。

気持ちに余裕がないのかもしれない。落ち着いているつもりなんだけど慌てているのかな…。マルキは外しても『次だ、次』という雰囲気を醸し出すし、オグリさん(大黒)は外した瞬間に忘れていると思う(笑)。オレとか裕二は『なんでだよッ!』って思っちゃう。だから引きずるのかな」

――シーズン序盤は転がってきたこぼれ球が最近来ないね。

「来ないなぁ。基本的には転がってくるタイプなんだけど(笑)。ただ、それは自分がチャンスを作る側に回ってしまっているからかもしれない。ドリブルからのパスだったり、クロスだったり。攻撃で押し込んでいる感じはあっても、相手の人数は多い。サイドで先手を取れる自信はあるから、あとは結果がほしい」

――シュート以外は手ごたえを感じているんだね。

「良くないときはボールにまったく絡めないし、実際にプロ1~2年目はそうだった。試合に全然入れなくてシュートすら打てない。去年の愛媛でも自分の出来が悪い試合はシュートをまったく打てなかった。でも、いまはパフォーマンスが良くなくても1本か2本はシュートやチャンスに絡めている。それはちょっと成長したところかな。

シュートということに関して言うと、あまり打っている感触がないんです。もう一つ前のポジションだと意識が変わってくるんだろうけど。FWとサイドハーフはちょっと意識が違うから」

――それは面白い。FWをやりたい気持ちはある?

「あ、2トップだったら(笑)。いまのシステムの1トップだとちょっと難しいところがあるけど、真ん中のところでやってみるのは面白いと思う。いまも自由にやらせてもらっているので、サイドに行くふりをして真ん中で受けることもできているけど、ドゥーさん(ドゥトラ)からは『学は去年は真ん中(FW)をやっていたんだね』と驚かれた。たぶんサイドプレーヤーだと思われていたんだと思う。だから真ん中をやってみたい気持ちはある」

――シーズンが始まってからはやっていないよね?

「やっていないと思う。キャンプではマルキやオグリさん(大黒)と2トップを組んでいたけど、シーズンが始まってからは左前で落ち着いているから。そこは“自分のポジション”と見せられている部分もあると思う。でも真ん中は真ん中で面白そう」

 

[ インタビュー実施日10月4日]

つづく

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