「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

借りを返すことは一生できない、忘れられない場所  [J14節川崎戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,649文字-

 

今節が終わるとJ1リーグはW杯による中断期間に突入する。マリノスはナビスコカップの予選リーグが免除されているため2ヵ月近く公式戦がない。すでにクラブから発表されているようにチームは3週間半の長期オフをとり、6月下旬には昨年同様に新潟県十日町でキャンプを行ってリーグ戦再開に備える。

4-2-3-1_開幕 その前に明日の川崎フロンターレ戦なのだが、マリノスは置かれている状況を冷静に見つめ直す必要がある。ACLの関係で大多数のチームよりも1試合少ない暫定順位とはいえ、現在15位に沈んでいる事態を深刻に捉えるべきだろう。今日17日、前節終了時点で16位のヴァンフォーレ甲府が勝利したことでマリノスよりも上の順位となった。

16位以下は、いわゆる降格圏である。つまりフロンターレに敗れると2ヵ月近く順位表の降格圏に滞在することになる。樋口靖洋監督は「危機感を持って戦わなければいけない。(降格圏に入ると)のびのびさを失ってしまうかもしれない」と危惧している。まだシーズンは半分以上残っていると油断するのが一番危険だ。そうやって降格してきた名門チームがかつていくつあったことか。最近、試合後に中村俊輔が「あのガンバでも降格したわけだから」と話すのは他人事ではないと強調しているのだろう。

相手についても触れておこう。いまのフロンターレはとても完成度の高いチームに仕上がっている。昨季序盤こそ方向性を見失っているように感じたが、尻上がりに調子を上げてACL出場権を獲得した。昨季最終節、我々はフロンターレに敗れ、優勝を逃した。思えばあのときからフロンターレはほぼ完成されていた。そして今年に入ってからは、単純に各選手が上手くなっている。その一言に尽きる。1+1=2を3や4にしようとする考え方もあるが、2+2=4以上なのである。マリノスでは定位置を確保できなかった森谷賢太郎ものびのびとサッカーを楽しんでいる。

 

下バナー

 

その相手に対して、指揮官は真っ向勝負を挑む考えのようだ。中村俊輔を先発に戻し、システムは慣れ親しんだ[4-2-3-1]を採用する。GKと両CBは不動の3人で右SBには小林祐三、左SBには下平匠が復帰する。ダブルボランチは富澤清太郎と三門雄大が組み、右MFに藤本淳吾、左MFには齋藤学、そして1トップには伊藤翔が入る見込みだ。

川崎4-4-2 能動的にボールを動かしてくる相手に対して、どんな戦い方を選択するか。樋口監督はフロンターレについて「攻撃しているときは疲労感がない。でも守備をしているときは疲労感がある。ボールを持って攻撃の時間を長くすることが大事」とポイントを明かした。水曜日に韓国でACLを戦い、体調面ではマリノスが有利だろう。アドバンテージを生かしたい。

世間の視線はすでにW杯に向けられ、この試合で言えば23人のメンバーに選ばれた大久保嘉人と齋藤学に注目が集まるだろう。ライト層にとってはわかりやすい動機で、彼らを一目みようと等々力陸上競技場は満員になるはずだ。ただ、マリノスにとっては昨季最終節を戦った「忘れられない場所」(樋口監督)である。2013年12月7日に優勝するはずだったが、優勝を逃した。あの喪失感と虚無感は忘れられない。

あの日以来となる等々力で、低調な戦いをしてはいけない。あの借りを返すことは一生できないが、少しでも良い思い出に書き換えたい。そういった思いとともに乗り込んで欲しい。

 

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ