0‐7の処方箋(J論)

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中村は試合後のミックスゾーンで「明日、胆のう取ります」と笑って宣言した [J14節川崎戦レビュー] (藤井雅彦) -1,590文字-

 

勝因は一つではなく複数あった。どれも称賛されるべき要素だったと思う。たった一つに限定することはできないのだが、個人的な見解を言わせてもらえれば、最たる要因は中村俊輔の復調だった。

4-2-3-1_開幕 この試合、中村は周知のとおり2アシストを記録している。1つ目は前半終了直前に栗原勇蔵のヘディングゴールをアシストした左CKで、2つ目は後半終了直前に今度はもう一人のCB中澤佑二へのアシストだった。どちらも彼にとって決して何度の高いキックではなく、むしろあれくらいの精度があっての当然の選手である。

そのはずが最近は明らかにキックの精度を欠いていた。セットプレーだけでなく、流れの中でも中距離以上のパスが通らない場面が多い。いくらコンディションが悪くて動けなくても、最大の武器であるキック精度まで落ちるのは異常だ。だからフロンターレ戦での最低限の精度を見て、まずは安堵した。

そして真骨頂はほかにある。中村は前半から誰よりも多くの汗をかいた。この試合から慣れ親しんだトップ下の位置に戻り、攻撃だけでなく守備にも精力的に参加した。懸命にプレスバックし、スライディングを繰り出し、空中戦のボールを競り合う。技術を発揮するのは大粒の汗を流したあとで、この日の中村はまさしくファイターだった。

 

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中村は試合後のミックスゾーンで「明日、胆のう取ります」と笑って宣言した。昨年11月に胆のう炎を発症し、今年に入ってからも万全の状態ではなかった。 ACLや連戦による疲労もあったため調子が上がらないことを一つに断定できな い。ただ、フロンターレ戦を迎えるまでに、19日に胆のう摘出の手術を決定していた事実を考えると、コンディション不良の要因の一つがそれだったことは避 けられない。いまは無事に手術が終わることを祈るのみだ。

川崎4-4-2 対戦相手の出来が良かったとは思わない。その理由など、どうでもいい。ただ相手の状態を含めた出来を、マリノスがきっちり上回った。前半から齋藤学は状態が良く、失敗しても笑顔を見せる余裕があった。また、伊藤翔はゴールもそうだが、意欲的なプレスバックを見せて守備でも貢献した。ダブルボランチと両CBでしっかり脇を締め、サイドでの攻防も互角以上に渡り合った。単純に言えば、個々のパフォーマンスが高かった。勝って当然の出来である。

この勝利で、降格圏を1日だけで脱出し、中断期間の約2ヵ月をハッピーな気持ちで過ごせる。システムも含めてマリノスの戦い方のスタンダードと言える試合だった。ただし、この日の出来がスタンダードと思ってはいけない。だから今後もブラッシュアップは欠かせない。その手段の一つが開幕前に足りなかったフィジカルトレーニングであり、中断期間中の補強であろう。

ひとまずは勝利に勝る良薬なし、だ。栗原は言う。「去年悔しい思いをした場所だけど、いまのチーム状態はそんなことを言っていられない感じで、とにかく勝つしかなかった」。そう、昨年の最終節のこともある。ただし「少しは借りを返せた、全然足りないけど」と続けた栗原の言葉こそ、正しい。

この日の快勝は、反攻のきっかけでしかない。おそらくあっという間に終わるであろう中断のあと、不本意な序盤戦を忘れさせてくれるような快進撃を期待したい。

 

 

 

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