「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

チーム4点目となったスーパーゴールですね。あのシュートを止められるGKは世界中を探してもほとんどいないでしょう。小池龍太選手がインナーラップを仕掛けたことも大きかった [下平匠の「匠の視点」]

 

匠の視点
構成:藤井 雅彦

 

 

2014年から2018年夏までF・マリノスの一員として活躍し、現在は南葛SCでプレーする下平匠が初めてメディアの世界に進出。

戦術眼とテクニックに長ける左サイドバックの目に、現在のトリコロールはどのように映ったのか。

快勝した川崎フロンターレ戦を振り返り、仲川輝人のビューティフルゴールについて「あのシュートを止められるGKは世界中を探してもほとんどいないでしょう」と唸る。

下平だからこその独自の視点。

匠の世界へ、ようこそ。

 

 

 

匠の視点

 

皆さんご無沙汰しています、下平匠です。

今シーズンからヨコハマ・エクスプレスで定期的にマリノスの話をしたいと思います。

題して『匠の視点』。

ちなみに僕が考えたタイトルではありません(笑)

マリノスの試合を定点観測して僕なりの視点で話していく初回は、4-2で勝利した先日の川崎フロンターレ戦が題材です。

 

 

小池龍太選手は運動量豊富で守備のインテンシティがとても高い

 

シーズンが開幕したばかりの公式戦2試合目なので、この時期はどのチームも完成度があまり高くない。新加入選手が多ければ多いほどフィットするのに時間がかかるのは当然で、それは3連覇を目指すフロンターレも例外ではありません。

 

 

例えば、チャナティップ選手は優れたテクニックを生かして攻撃で違いを作れる選手ですが、インサイドハーフとしてプレッシャーをかける動作は向上の余地を残しているように感じました。具体的にはマツケン(松原健)の右足のコースを切れていないことが何度かあり、序盤にマツケンのパス一発で、登里選手の背後を突いたエウベルがチャンスを作る場面もありました。

 

 

反対にマリノスは相手にポゼッションされている状況でも、全体が連動してしっかりパスコースを限定できていたと思います。相手が少し強引にレアンドロ・ダミアンにボールを入れてきた場面でも、センターバックの岩田選手がしっかり潰せていた。岩田選手は大分所属時代よりもフィジカルが強くなり、ボランチでもそつなくプレーできて、この試合で対応力が光った選手のひとりだと思います。

 

 

その岩田選手とコンビを組んだエドゥアルド選手は左利きらしいボールの持ち方から正確なパスを出せる選手。左サイドバックに入っている小池龍太選手が右利きなので、エドゥアルド選手からボランチやトップ下に縦パスをつけられるのは大きい。一発の長いボールで局面を変えられるのも特徴だと思います。

 

 

マリノスにとっては前半から悪くない流れでしたが、後半に入ってフロンターレが前からのプレスを強めてきたことで結果的にさらに優位に立つ流れになりました。

具体的には、家長くんがエドゥアルドにプレッシャーをかけてきた場面でサイドバックがフリーになって起点ができました。フロンターレのインサイドハーフやサイドバックがプレッシャーをかけるタイミングが少しだけ遅れていて、マツケンと小池龍太選手は複数の選択肢を持ちながらプレーできた。

このように試合全体を通してマリノスは立ち位置で優位性を作れていたように感じます。それがジャブとなって効いたのか、フロンターレは次第に足が止まって全体が少しずつ間延びしていった。テル(仲川輝人)の2点目はシュートもさることながら、ディフェンスラインを押し上げることができていなかった顕著な例だと思います。

その場面では、小池龍太選手がインナーラップを仕掛けたことも大きかった。ゲーム終盤の時間帯にサイドバックが長い距離を走って出て行くのは簡単にできることではありません。彼は運動量が豊富で守備のインテンシティがとても高いプレーヤー。本職が右サイドバックなのはもちろん知っていますが、彼以上に攻撃で違いを作れる左サイドバックが現れないかぎり、監督としてはポジションを戻しにくいのではないでしょうか。

 

 

 

テルは走らせてナンボの選手。スピードに乗った状態で良さが出る

 

個人で目を引いたのは、やっぱりテル(仲川輝人)ですね。

前半は山根視来選手のチェックが早く、なかなか特徴を出せませんでした。良い形でボールをもらえず、ボールが入った場面でもすぐにプレッシャーがかかり、前向きでプレーできませんでした。

 

 

これは前半だけでなく試合トータルの話ですが、おそらくボールタッチの回数は決して多くなかったはず。特に反対サイドのエウベル選手と比較すると、かなり少ないはずです。

でも左ウイングで起用するのならば、ボールタッチ数やプレーへの関与の数で評価すべきではないのかもしれません。結果的に2ゴールを挙げたわけですし、パフォーマンスとしては効率が良いとも言えます。テルの良さは求められているプレーを正確に続けられること。クロスに対して相手の前に入り込む動きを丹念に繰り返したからこそゴールを決められた。

そしてチーム4点目となったスーパーゴールですね。あのシュートを止められるGKは世界中を探してもほとんどいないでしょう。

 

 

本人は自信があったとは言わないと思いますが、それまでのプレーの感覚が良かったからこそ自然にシュートを選択した。自信がない時は横パスやバックパスになってしまうのが選手の深層心理。ケガをせず、このパフォーマンスを継続できれば、また日本代表に選ばれる可能性も十分にあると思います。

反対に課題を挙げるとすれば、それも左サイドからの崩しの部分かなと。

 

 

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