「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

藤本淳吾と兵藤慎剛の二者択一となる右MF [J16節セレッソ戦プレビュー] (藤井雅彦) -2,285文字-

 

セレッソ大阪は中断期間中の監督交代をきっかけに、サッカーの方向性を変えたようだ。前任のランコ・ポポヴィッチ体制ではつかみどころのないスタイルで、守備もただ引いて守る形にシフトしていた。それが新監督の下では、対照的に前線から積極的にプレスを仕掛ける。マリノスがサンフレッチェ広島と戦っている裏側で、C大阪は川崎フロンターレと対峙し、1-2で敗れたものの前半はまずまずの内容で1-0とリードして折り返した。後半に入って息切れして逆転負けを喫したようだが、ひとまずはスタイルを垣間見せた。

C大阪4-3-3 その試合を映像で確認した樋口靖洋監督は「守備はかなりアグレッシブになった」と変化を感じ取っていた。思い返せば昨季も課題とされていた守備を意識するあまり、自陣にベタ引きする戦い方を選択し、最終的にリーグ4位という成果を収めていた。それが当時からさまざまな過程を経て、C大阪は生まれ変わった。その中で顔ぶれにもさまざまな変化があり、前線のキーマンだった柿谷曜一朗がスイスのバーゼルに海外移籍し、今節は南野拓実も前節の退場処分による出場停止。一方でウルグアイ代表としてW杯に出場していたディエゴ・フォルランが合流したが、試合出場はコンディション次第だという。

マリノスとしては、前から追いかけてくるチームのほうが嫌である。これまでも述べてきたようにビルドアップに難があるチームで、かといってカウンターを得意としているわけでもない。相手が自陣にスペースを作ってくれても、それを有効活用する術がない。伊藤翔はオールラウンドに高い能力を所持するが、一人でスペースを突き、さらに相手に数人引きつけて最終局面に持ち込むほどのパワーはない。中村俊輔は引いた位置でボールを受ける回数が多く、齋藤学は自身のドリブル突破に備えて左に張り出す。それぞれの距離が遠く、前線に起点を作れない。だから先日の広島のように一度引いてリセットした状態からスタートしてくれるチームのほうが、まだ助かるのだ。

いかに前線に起点を作り、そこから前への推進力を出すか。手段はいくつかあるが、ないものねだりに意味はない。架空のFWを想像するよりも、手持ちの駒をいかに組み合わせ、化学反応を起こすか。このタイミングでスタメンに触れておくと、広島戦から変更があるとすれば藤本淳吾と兵藤慎剛の二者択一となる右MFだ。試合前日のフォーメーション練習では両者が交互に右MFに入り、おそらく指揮官も頭を悩ませているのだろう。

 
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4-3-2-1_後半戦藤本の技術と得点能力は捨て難いが、チームを円滑に回したいシチュエーションなら後者がより適任だろう。昨シーズン、マリノスの攻撃が手詰まりになったときに貢献したのは左SBドゥトラ、そして兵藤の二人だった。ドゥトラはドリブルによって局面を動かし、兵藤は各選手の中間ポジションでパス&レシーブを繰り返して潤滑油となった。今回もそんな役割を期待したい。

また、助っ人ストライカーのラフィーニャがこの試合から起用可能になり、さっそく遠征メンバーに帯同する模様だ。チーム合流後に一頓挫あり、主力組に入って練習試合を行えなかったのはマイナス材料だが、悔やんでいても仕方がない。「練習で合わせる時間がないので、試合に使わないと融合するきっかけがない」と樋口監督。短い時間かもしれないが、C大阪戦で途中出場する可能性は高く、それがどんなシチュエーションかによって仕事内容も変わってきそうだ。広島戦のように追いかける展開ならば伊藤との2トップ起用が濃厚なのだが、リードしていたり引き分けの状況で指揮官がどう起用するか。樋口監督のベンチワークも鍵を握る。

広島に勝利した勢いをさらに大きなものにして、連戦の後半を迎えたい。広島戦の内容が内容だっただけに、C大阪に敗れると勝ち点3の価値が薄れる可能性がある。良い意味でも悪い意味でも広島戦を忘れるために、ここでもきっちり相手を1点上回らなければいけない。

 

【今節のキーマン】
MF 7 兵藤 慎剛

 スタメン昇格の可能性は五分五分だ。広島戦では前線の動きを活性化し、チャンスメイクに一役買った。とはいえ本質的には90分間トータルで仕事をするタイプだ。大仕事はなくても、チームのためにしっかり働ける選手で、攻撃に閉塞感漂ういまだからこそ必要な選手と言える。

 序盤戦は出場機会に恵まれず、悔しい思いをした。「こんなに試合に出られないのはプロ入りした直後の半年以来」と唇を噛む。負傷があったわけではない、新加入でポジションを争う藤本淳吾が抜群の仕事をしているわけでもない。にもかかわらず出番が巡ってこない日々に悶々としながら、それでも日々のトレーニングに手を抜くことはなかった。

 仮にベンチスタートでも、彼は彼の仕事をするだろう。しかし、上り調子のいまはスタメン起用の価値がある。前線のレシーバー役として、チームの潤滑油として、兵藤が入ることでチームの歯車が動き出す。

 

 

 

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