「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

隙を見せたのはピッチ内だけではない [J15節セレッソ戦レビュー] (藤井雅彦) -1,508文字-

 

これだけたくさんのチャンスを作り出した試合はマリノスとしてはとても珍しい。後半だけで10回近く決定機があったのではないか。十日町キャンプから取り組んでいるニアサイドへのクロスから少なくとも3回は絶好のチャンスを迎え、特に中町公祐がファーサイドでフィニッシュした形はニアサイドに人数をかけたからこその効能だった。この場面は惜しくも決めきれなかったが、攻撃面はサンフレッチェ広島戦から大きく向上した。

4-3-2-1_後半戦 守備でも広島戦のように引いて守るのではなく、ボールを失った瞬間から切り替え早く相手を追い込み、何度かボール奪取に成功した。セレッソ大阪の出来がイマイチだったのもたしかだが、試合全体を通してマリノスが主導権を握っていたのは間違いない。前半終了間際の失点こそミス絡みで反省材料になるが、概ね問題はなかった。後半、逆転するのは時間の問題だった。

したがって逆転での2得点は極めて順当な結果である。チャンスの数を考えたときに、さらに2~3点追加すべきだったという声もあるだろうが、相手のパワー不足を考えれば1点リードで十分だった。守備の定評のあるチームが1点リードを守りきれないようでは、もはや強みなどない。複数得点しているのだから2得点は悪くない。あとは10分程度の時間をやり過ごせばよかった。

それができなかったのはキム・ジンヒョンのキック力に中澤佑二のクリアミスが重なり、そこに杉本健勇の得点能力があったから。試合後、中澤は「90分あって、1秒か2秒気を抜いたらやられた。申し訳ない」と頭を下げた。このように口に出して自身を戒める彼はとても珍しい。たった一つのプレーで勝ち点3が勝ち点1に格下げしてしまう怖さをあらためて思い知った。

加えて言えば、隙を見せたのはピッチ内だけではない。逆転に成功してからのベンチワークは明らかに問題があった。

 
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C大阪4-3-3  ラフィーニャを投入して[4-4-2]に変更し、同時に中村俊輔をボランチに下げてゲームメイクを託した。守備面に綻びが生じることを承知で攻撃的に打って出たわけだ。それなのにリードしてからシステムを戻さず、あろうことか中村をボランチ起用し続けた。この采配には首を傾げざるをえない。

ベンチには喜田拓也がいた。ピッチ内にはボランチもできる兵藤慎剛がおり、代わって2列目をこなせる人材もベンチにいた。カウンターで点を取りたいならばラフィーニャと齋藤学の二人がいれば十分の状況だった。中村を中盤の底に置いておく意味など、まったくない。ピッチに残しておきたいならば、前線に置くべきだった。

「バランスを崩す必要がなかったというのが一番の理由」

 樋口靖洋監督は選手交代についてこう語ったが、果たして逃げ切り体勢のバランスとして本当に正しかったのか。やれることをやった上でミスから失点し勝ち点2を落としたならば引きずる必要はないが、指揮官がただ指をくわえて見ていただけでは責任問題だ。ここで失った勝ち点2はおそらくシーズンの最後に大きく響くことになるだろう。

 

 

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