「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

“戦略”というもの [J17節名古屋戦レビュー] (藤井雅彦) -1,358文字-

 

あえて敵将・西野朗のコメントから原稿をスタートさせたい。

「今日はマリノスにとっては1試合多い状態でのゲームということで、後半から彼らのチームパフォーマンスが落ちてくる部分を戦略的に考えていた。今日は自分たちから仕掛けて行くよりも、バランスを持って戦うことに重点を置いて試合に臨んで、そのためのシステム変更、サイドアタックに対するケア、選手のキャスティングをした。後半に勝負をかけていきたかったので、後半になってからスイッチを入れ直して正解だった」

名古屋4-2-3-1これが“戦略”というものである。戦術はあくまで自分たちの中に存在するが、戦略は対戦相手をスカウティングし、最後に1点上回るためにある。西野監督としては前半があまりにも低調かつ失点したことが誤算だったのだろうが、後半に巻き返したのは想定どおりだった。永井謙佑と松田力の二人を戦略上のキーパーソンに起用し、彼らがしっかりと結果を出した。

対して、マリノスはどうだろう。スタメン11人が前節と同じなのは理解できる。唯一、懸案事項だった左SB下平匠のコンディションが芳しくないため、この試合が現役ラストゲームとなるドゥトラを起用するのも当然だろう。40歳の鉄人を含む11人は前半から主導権を握り、中村俊輔のゴールで先制する。欲を言えばもう1点ほしかったが、内容は悪くなかった。

ただ、後半から敵将は前述したように温めていた手を打ってきた。それに対して、マリノスの監督は「流れは悪くない」とどの試合でも不変のコメントを残すのみ。後半に入り、明らかに被カウンターの回数が増えたことを見ても、流れは名古屋に傾いていた。それなのに、ただ指をくわえて見ているだけでは、責務をまっとうしたとは言えない。

 

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4-3-2-1_後半戦

しかも最初の交代は伊藤翔→ラフィーニャという不確定要素たっぷりの交代だった。今後を見据えてラフィーニャを1トップ起用したい心理なのだろうが、当然リスクを抱える。それ以外はまるでフリーズしたかのように動けず、2枚目と3枚目のカードは被弾してから。もはや後の祭りである。

ラフィーニャ投入にどんな意図があるのか。ファビオをボランチで起用したのは攻撃と守備のどちらに期待しているのか。それをピッチ内の選手が理解し、共有できていないとすれば、非常に危険な状態だ。「あまりにもメッセージ性がない」。試合後、ある主力選手はこうつぶやき、肩を落とした。最近は監督采配の拙さばかりが目立つ。マリノスが勝つためにはどうやら2点のリードが必要のようだ。そうすれば指揮官も落ち着いてベンチに座っていられるだろう。しかし、それは拮抗したリーグにおいて、とても難しい作業である。

 

 

 

 

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