「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

夏本番、玄人好みの渋い老練なサッカーを [J18節ガンバ戦プレビュー]  (藤井雅彦) -1,925文字-

 

シーズンは早くも折り返し地点を迎え、今節のガンバ大阪戦から後半戦がスタートする。前半戦を振り返り、樋口靖洋監督は「11点足らない」と開口一番言った。11点とは勝ち点を指しており、目標にしている試合数×2を達成していれば、現状は勝ち点34まで伸びているはずなのだが、現実は勝ち点23にとどまっている。真面目な指揮官は「この11をこれから取り返していかないと」と今後の展望を語る。

4-3-2-1_後半戦しかし、水を差すようで申し訳ないが、前半戦の出遅れを取り戻しつつ、後半戦も当初の予定どおりに勝ち点を積み上げるのはほぼ不可能である。計算すればすぐに分かることだが、後半戦だけで勝ち点45が必要になる。そのためには後半戦17試合を15勝2敗、あるいは14勝3分が必要になる。最低でも10連勝以上が必要で、ちょっと現実的な目標ではないだろう。

となればリーグ全体の優勝推定ラインが下がることを祈るしかないのだが、首位の浦和レッズは昨季までの課題だった守備に磨きがかかっており、どうも簡単には崩れてくれそうにない。とはいえ目標の勝ち点68到達はともかく、優勝争いに絡むためにはここで躓くわけにはいかない。これから夏本番を迎えるものの連戦は少なくなる。週1回の試合の規則正しいリズムに勝ち点3という彩りを加えたい。

今節、対戦するG大阪は攻撃に特長があり、リーグ戦再開後の3試合で合計11ゴールと攻撃陣が爆発している。FWの位置に入っている宇佐美貴史は好調時のキレを取り戻し、途中加入のパトリックのフィジカルも脅威だ。そこに遠藤保仁、今野泰幸というW杯メンバーが本調子の状態ならば、これからは攻撃に軸足を置いて浮上してくるかもしれない。

 

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G大阪4-4-2マリノスとしては反対に軸足を守備に置かざるをえないが、これはG大阪戦に限った話ではない。「ウチの良さである良い守備からの良い攻撃を出したい」と樋口監督。マリノスの場合、特に攻撃と守備は表裏一体で、密接に関係している。どちらか一方では足りず、名古屋戦の前半は攻守ともに良い出来だったが、後半はそれとは逆の内容になってしまった。

昨夏もそうだったように、この時期になるとマリノスは極端に前からプレッシャーをかける戦い方を一時的に放棄する。プレスのスタートラインが下がり、全体が少し下がった位置でコンパクトブロックを形成する。もちろんボールを失った直後はプレスに走るが、それもタイミングを見ながらの判断で、すべての状況に対して追いかけるわけではない。おそらく明日のG大阪戦でも暑さを考慮し、老獪な省エネサッカーを展開するはずだ。

メンバー編成に大きな変化はないが、ドゥトラが引退した左SBには下平匠が入る。ほかでは小椋祥平が試合前々日に腹痛を訴えて、その日の練習を回避した。遠征には帯同しているが、試合当日に再度痛みが出た場合は、小椋不在の紅白戦で主力組に入った三門雄大がボランチを務める。小椋が見せていたここ数試合の積極性はチームに勢いをもたらしていただけに気がかりだが、三門もエネルギッシュなプレーを得意とするタイプだけに、仮に小椋が出場できなくても大きなマイナスにはならないだろう。

いくら攻撃陣が好調でも、点の取り合いでは分が悪い。失点を避けつつ、セットプレーを生かして勝機を見出す。そんな玄人好みの渋い展開で勝ち点3を得られれば最高だ。

 

 

【今節のキーマン】
FW 16 伊藤 翔

ハーフシーズンを終えて4得点は物足りない数字だ。序盤戦こそチャンスに恵まれずシュート0本で終わる試合もあったが、中断明けはそこそこチャンスが巡ってきている。前節の名古屋グランパス戦でも独力で惜しい場面を作っているだけに、あとはゴール前でのシュート精度を求めたい。
ラフィーニャが加入したことで1トップ争いは熾烈になっているものの、樋口監督の伊藤への信頼は厚い。「そろそろ爆発してくれるはず」と期待を口に出すこともある。その期待に応えるには、やはりゴールしかない。チームを勝利に導くゴール、できれば今シーズン初のマルチゴールを期待したい。

 

 

 

 

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