「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

そのとき誰がマリノスを選び、残るのか [J23節名古屋戦レビュー] 藤井雅彦 -1,461文字-

 

試合当日、キックオフ約2時間前に発表されたスタメン表に栗原勇蔵の名前がなかった。前日練習まで普通にこなしていた栗原だが、その日の夜に発熱したという。ここまで中澤佑二、榎本哲也とともフルタイム出場を続けてきた男の無念の欠場が決まった。代役として先日のナビスコカップ準々決勝第2戦・柏レイソル戦でも中澤とコンビを組んだファビオが順当にスタメン表に名を連ねた。

4-3-2-1_矢島 昨年からチームに加わったファビオの魅力は、なんといっても抜群の身体能力である。跳躍力とスプリント能力に秀で、追いつきそうにないボールにも最後のところで足が伸びる。実際、名古屋グランパス戦の序盤にも、エンドラインに戻りながらボールをクリアする場面があった。ボールを持った際の判断スピードなど荒削りな部分もあるが、ポテンシャルに疑いの余地はない。試合勘という点でも、結果的に柏戦に出場していることが吉と出た。

しかしながら、今シーズンのファビオが昨シーズンに見せていた安定感を欠いているのも事実である。当時、関東1部リーグに所属していたSC相模原から2段階飛び級でマリノスに加わった昨年は、おそらくモチベーションに溢れていたことだろう。試合に常時出られなくても、名門クラブに身を置く幸せがあったはずだ。それが2年目ともなると、違った心理が生まれてくる。試合に出なければモチベーションとコンディションを保てなくなる。実力者であればあるほど、そういった状態に陥っても不思議ではない。

1失点目はそのファビオとGK榎本哲也の連係ミスから献上した。アシスト役に回った永井謙佑のクロスは、タイミングと精度がこれ以上なかった。ボールを受けてから間髪入れずにマリノスの急所をえぐった。ニアサイドの中澤佑二は対応できず、ファビオは戻りながらの処理を要求され、榎本が出るかどうか際どいコースだった。結果、ファビオと榎本の両選手がボールに触れられず、ファーサイドに隠れていた川又堅碁に押し込まれた。

 

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名古屋4-2-3-1 くすぶっているのはファビオだけではない。例えばFWの藤田祥史は、長所が生かされる戦い方がまったく模索されず、ピッチに立ってもいつも消化不良のまま試合を終えてている。左利きの彼はクロスをニアサイドで合わせるのが得意なのに、いつもボールは頭上を越えていくばかり。チームとして藤田に点を取らせる意思がまったく感じられない。

結果が出ていればベンチメンバーも納得せざるをえない。昨年のマリノスがそうであったように。しかし、個々の良さが生かされず、チームとしても結果が出ない。そうなれば精神衛生上の均衡は保たれない。名古屋戦での敗戦によって、マリノスの今シーズンは事実上、終わった。視線は自然と来季へ向いていく。そのとき、誰がマリノスを選び、残るのか。

ここからの敗北は、今シーズンの順位だけでなく、来シーズンの編成にも影響を及ぼすことを忘れてはならない。

 

 

 

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