「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ついに本職をボランチとする選手がいなくなってしまった [J30節セレッソ戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,591文字-

 

2連勝ときっかけをつかみつつあるチームに、また難題が襲ってきている。負傷者続出でもどうにかやりくりしてきたが、さすがに苦しい状態だ。

4-3-2-1_藤本ボランチ 前節、大宮アルディージャ戦で富澤清太郎が右足首を打撲。後半途中までプレーを続けたものの、交代を余儀なくされた。中3日で臨むセレッソ大阪戦の出場はどうやら難しそう。流動的な選手が揃う中盤の中で唯一、ディフェンスライン前方でフィルター役を務めていただけに痛い離脱だ。

大宮戦で富澤に代わって途中出場したのは三門雄大だった。しかし、そもそもサガン鳥栖戦で痛めた腰は万全の状態ではなかった。20分程度の出場ながら、患部を悪化させることに。「日によって痛みに波がある。試合のときはアドレナリンが出ていたから大丈夫だったけど、終わってからのバス移動のときは痛かった」。試合当日の状態次第になるが、こちらも出場は難しそうだ。

ついに本職をボランチとする選手がいなくなってしまった。中町公祐、小椋祥平、喜田拓也は全体練習に合流できていない。その結果、ファーストボランチが兵藤慎剛という台所事情は非常に苦しい。そして、兵藤の相棒を誰が務めるのか。樋口靖洋監督は「いる選手をコンバートして回していくしかない」とさすがにお手上げの様子である。

まず本来はボランチの佐藤優平という選択肢が挙がる。ただ、最近は佐藤が高い位置でダイナミズムをもたらしているから、周囲の選手はスペースと時間を得られる。リーグ戦初ゴールなど心身ともに波に乗っており、さらにいまのプレースタイルを見ていると2列目から外すのは得策ではない。

 

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C大阪4-4-2 これまでビハインドの場面などで攻撃的なオプションとして中村俊輔をボランチ起用する策もたびたびあった。ただ、佐藤同様にこの2試合の中村のキレキレぶりは圧巻だ。中村が高い位置でボールロストしないからこそマリノスは攻撃に枚数をかけられる。試合開始からボランチのタスクを任せるのは間違いだろう。

そこで藤本淳吾である。本人は「オレと兵藤のダブルボランチじゃあ…」と苦笑したが、ほかに選択肢がない。出し手と受け手の両方をこなせる選手だが、今回は出し手としてチームの歯車になれるか。守備の強度は富澤と比較対象にもならないが、ボールを持って主導権を握れる展開になればボランチ藤本は一考の余地がある。守備はごまかしながらやるしかないだろう。

緊急事態なのだから、何かに目をつむって戦うしかない。中3日の調整で戦術トレーニングは行っておらず、セレッソ大阪戦に臨む布陣は樋口監督の頭の中にある。試合当日のスタメン発表が不安であり、楽しみでもある。

 

【この試合のキーマン】
MF 11 齋藤 学

 ボランチに負傷者続出。選手がスライドした結果、久しぶりに先発出場するだろう。最近は佐藤の台頭もあってベンチスタートに甘んじているが、本質的には長い時間出場することでリズムをつかみ、仕事をこなすタイプだ。短い時間では試合とチームの波に乗れない。
ここ2試合のチームは佐藤を筆頭に流動的なポジショニングとパスワークが好調だ。そのリズムに乗りつつ、個の打開能力を見せられるか。W杯出場によって周囲からの期待値は格段に上がっているだけに、そろそろやってもわなければ困る。

 

 

 

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