「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝利の可能性を上げるには、もう少し変えないといけない [PSM松本山雅戦レビュー] 藤井雅彦

4-3-2-1_2015昨季の主力9人に、プロ3年目の喜田拓也とユース所属で二種登録された和田昌士を入れた11人がプレシーズンマッチのスタメンを構成した。この二人の登用にしても、富澤清太郎とラフィーニャがスタートからピッチに立てる状態なら、果たしてどういった扱いだったか。和田についていえば、負傷者多数という要素がなければ宮崎キャンプに参加するはずではなく、したがって甲府との練習試合で2ゴールを決める活躍もありえなかった。

それなのに、このゲームでの最大の収穫が和田というのは、嬉しくもあり寂しい事実でもある。1トップに入った和田は物怖じしないメンタルでプレーし、得意にしているターンからチャンスを作り出した。自身が放ったシュートは惜しくもバーをかすめて外れたが、トップレベルでも十分に通用する“戦力”と考えていい。マリノスが日本に誇れる育成組織の素晴らしさをあらためて思い知った。

ただし和田という新進気鋭の選手の話題を除き、マリノスはお寒い内容でプレシーズンマッチを終えた。「開幕2週間前ということもあるし、危機感を持ってやらないといけないし、このままでは昨年とまったく変わらない」という中澤佑二は警鐘を鳴らしたように、昨季からの変化が見えにくいことが最大の問題である。

 

 

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松本3-4-2-1そもそも冒頭で述べたように選手が変わらず、システムも変わっていないのだから、サッカーが大きく変化するわけがない。エリク・モンバエルツ監督が斬新な新戦術を用いているわけではなく、就任から幾度となく繰り返している「マリノスのプレーアイデンティティを作る」という言葉は、いまのところ形になっていない。

中村俊輔と端戸仁の長期離脱はとても残念なニュースだが、順調に進めば富澤やラフィーニャ、あるいは伊藤翔は開幕に間に合う。昨季と変わらない構成ではあるが、それなりの結果を残せるだろう。依然として得点力不足は続くだろうが、安定した守備力は計算できる。前線の個が輝いた試合では勝ち点3を積み上げていける。ラフィーニャの爆発という条件付きだとしても、このメンバーで優勝争いに絡むチャンスはあると筆者は分析している。

ただ、それでは樋口靖洋からエリク・モンバエルツにスイッチした意味がない。始動日から新監督が指導している内容は、昨季からの細かな変化でしかない。それは勝敗の行方を大きく左右する事象ではなく、あくまで「サッカーの原則」(モンバエルツ監督)である。勝利の可能性を上げるには、もう少し変えないといけないし、変わらないと難しい。それほど今のマリノスは頭打ちで、停滞している。

残り2週間でどう変わっていくか。残された時間は決して長くない。

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