「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

いわゆる“温存” [ナビスコ予選仙台戦レビュー] 藤井雅彦 -1,541文字-

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外国籍の監督がカップ戦を軽視する傾向にあるのは、いまに始まったことではない。ただ、マリノスにとって久しぶりの異文化なので少し戸惑うだけだ。戦前、エリク・モンバエルツ監督は「11人でシーズンのすべての試合を戦うことはできない」と語り、メンバー変更を示唆した。その結果、ベガルタ仙台戦には直近のFC東京戦から9選手を入れ替えて臨んだ。

それだけではない。交代カード3枚も完璧なまでにリーグ戦を意識した、いわゆる“温存”であった。試合前から「90分プレーすることはないだろう」と話していたアデミウソンが最初の交代で、続いて栗原勇蔵もお役御免。最後はFC東京戦でも持ち味を発揮し、サガン鳥栖戦でもチャンスがあるかもしれない三門雄大をベンチへ下げた。交代出場は順番に齋藤学、ファビオ、藤本淳吾とレギュラークラスだから、試合をあきらめたわけではない。ただ、プライオリティーが鳥栖戦にあるのは間違いない。

 

 

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仙台4-4-2 それでも、ここまでのリーグ戦2試合でベンチ入りすらしていない比嘉祐介や天野純、あるいは熊谷アンドリューが先発するという楽しみはあった。しかしながら、結果としてアピールに成功した選手は一人としていなかった。むしろレギュラークラスとの力の差を痛感させられる内容で、ここからリーグ戦で出番を得る可能性があるのはすでに準レギュラーの三門くらいだろう。

アピール不足の選手に共通しているのは、何よりも結果を残せなかったこと。佐藤優平や天野純は高い位置でボールによく絡み、攻撃にリズムをもたらした。でも結果がない。結果とはたとえばゴールであり、アシストだ。爪痕を残してやろうという意気込みや気概が欠けていた。あるいは比嘉のように失点に絡むミスを犯してしまっては元も子もない。野沢拓也の浮き球パスとウイルソンのトラップ&シュートはワールドクラスだが、結局は背後のスペースを突かれた比嘉のディフェンスミスである。

チームとして目指している戦術は徐々に浸透してきた。それでも結局は個々の力が足りなければ試合には勝てない。最低限の個人能力は絶対に必要で、戦術だけではどうしようもない。つまり監督の手腕よりも、選手のクオリティーが重要なのだ。マリノスのBチームでは仙台に勝てなかった。水曜日のナビスコカップは、忘れがちな事実を伝えてくれているのかもしれない。

 

 

 

【試合を終えて】

エリク・モンバエルツ監督

「結果を残念に思っている。でも内容的には悪くても引き分けの試合だった。FC東京戦と仙台戦でメンバーをかなり入れ替えたので比較するのは難しいが、FC東 京戦は組織的な守備ができた。仙台戦ではゲームコントロールの部分がよかった。ただ、仙台戦では絶対にやってはいけないミスを二つあった。でもゲームを支 配していたし、ビルドアップからボールをつなぐこともできていた。足りなかったのは攻撃のところでのスピードアップ。相手の守備がコンパクトだったが、ウ チはサイドでフリーになる場面をいくつか作れた。そこでシンプルにクロスを上げず、攻撃がスピードダウンしてしまった」

 

MF 6 三門 雄大

「今 年の最初から体は動いているし、ボールや人に対して行くこともできている。球際で強くプレーすることは、間違いなく去年よりもできている。それによって相手が嫌がっているのも感じる。個人的には久しぶりのスタメン出場で持ち味を出せた。チームとしてもアグレッシブさや勝ちたいというフレッシュな気持ちを表 現できたと思う。ただ、だからこそ勝ちたかった。みんな一生懸命やっているのは間違いない。でも大事なところで弱かったり、軽かったり、ミスが出て、結果 は負け。これではアピールにならない。頑張っている上で精度や結果を求めないと意味がない」

 

 

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