「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マリノスはとてもソリッドだった。鳥栖にほとんど何もさせなかった [J3節鳥栖戦レビュー] 藤井雅彦 -1,403文字-

 

サガン鳥栖にほとんど何もさせなかったことが勝因だろう。特に、相手のストロングポイントである豊田陽平は終了間際のヘディングシュートを除き、存在感稀薄に終わった。それは中澤佑二と栗原勇蔵、そしてボランチのファビオが協力体制を築いて彼を封じたからにほかならない。競り合う選手とカバーする選手がそれぞれの役割をまっとうした競り合う選手は強く、激しく当たる。カバーする側は神経を研ぎ澄まして待ち受ける。実に見事だった。

4-3-2-1_2015 しかしながら、これはエリク・モンバエルツ監督の新戦術の賜物ではない。鳥栖のスタイルは昨季以前と変わらず、それに肉弾戦で対抗するのも大きく変わらない。ブロックを作ってからプレッシャーをかけるスタイルに変更したが、結局のところ鳥栖のロングボールすべてを封じることはできない。むしろ蹴られてからが勝負の始まりである。どれだけ良い準備をして、良い対応ができるか。そういった点で、マリノスはとてもソリッドだった。

一方の攻撃については、正直言って劇的に進捗したわけではない。それでも決勝点は数多くの選手を経由して生まれたゴールだった。アデミウソンのキープ力が生かされ、サイドでボールを受けた齋藤学が仕掛ける素振りから中央へクロスを入れ、それによってできたサイドのスペースを両SBが活用し、最後はスルスルと前線に上がった兵藤慎剛が押し込んだ。90分の中で稀なシーンとはいえ、それによって生まれたゴールには価値がある。

残念だったのは、あれだけ数多くあったセットプレーをまったく生かせなかったこと。本来ならば粘り強く守り、リスタートから1点奪って勝ち切るべきゲームだった。藤本淳吾と兵藤のボールの質はお世辞にも高いとはいえず、中村俊輔不在をあらためて痛感させられた。中澤、栗原、ファビオとターゲットはいるにもかかわらず、彼らを正確に捉える場面すらなかった。モンバエルツ監督はセットプレーやスカウティングに時間を割いておらず、今後は何かしらの施策も必要だ。

 

 

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鳥栖4-2-3-1 前節のFC東京戦後にも述べたように、今年のチーム編成と戦い方をリーグ戦に持ち込んだとき、スコアレスのまま前半を終え、拮抗した展開のまま時間が過ぎていくことが多くなる。そんなゲームに決着をつけるにはセットプレーがもってこいである。いや、正確にはそれしかない。齋藤学やアデミウソンの打開能力にかかる負担が大きく、彼らとて毎回突破できるわけではない。FC東京戦のスコアレスドローと鳥栖戦の1-0は、紙一重だった。

それでも、ようやく手にした初勝利は意義深く、価値がある。どんなチームでも新体制になってから初勝利するまで落ち着かないもので、選手たちも進んでいる道に自信を持てない。依然として課題は多く、そもそも進んでいる道が正しいかどうか怪しい部分もあるが、ひとまずは今シーズンのスタンダードで初めて勝ち点3を手にした。この勝利を次につなげて、勢いへと昇華させたい。

 

 

 

 

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