「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

指揮官のゲームプランとともに、選手個々の判断を問われる [1st5節仙台戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,741文字-

ここ数年、マリノスはベガルタ仙台を苦手としている。戦績以上に、劇的な勝利を飾っても手ごたえがあまりない。もちろん昨シーズンまでの傾向ではあるが、監督交代した柏レイソルと違って仙台は同じ戦い方を貫いている。昨季は2戦2勝したが、差はなかった。競った試合で結果的に頭一つ抜け出したのがマリノスだった。明らかな力差や、試合のイニシアチブを握っている雰囲気はない。

4-3-2-1_2015 メンバーを大幅に入れ替えていたので参考にならないが、先日のナビスコカップではアウェイゲームを0-1で敗れている。一瞬の隙を突かれて天才・野沢からの浮き球パスをウイルソンに決められた。比嘉祐介のマークミスといえばそこまでとはいえ、あのような質の高いプレーをできるのは絶対能力の高さだ。今回も余裕と時間とスペースを与えてしまえば、失点は免れないだろう。

仙台とのゲームはいつも特徴が見えにくい。それはマリノス以上に仙台のスタイルが不透明だからである。小林祐三は言う。

「ウチは特徴のあるチームに強い。でも特徴のない相手、たとえばこの前の清水みたいなチームと対戦すると塩試合になってしまう。去年までの柏もそうだったけど、今年は柏が特徴あるチームに変化していた。じゃあ仙台は?」

どちらかといえば、特徴のない後者に分類されるだろう。浦和レッズやサンフレッチェ広島のような特徴的なシステムではなく、川崎フロンターレのように色があるわけでもない。しかし、決して弱いチームではない。伝統的に守備の強さを持っており、前出した野沢やウイルソン、あるいはリャン・ヨンギのように武器を持った選手が前線にいる。簡単に勝てる相手ではない。

 

 

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明日は、まず守備をどう考えるか。柏戦ではそれまでの試合と違って高い位置からボールを追い、相手の最終ラインにもプレッシャーをかけた。それは柏が頑なにボールをつなぐチームだからである。仙台は躊躇なくロングボールを使って中盤を省略してくる。そのため無闇にプレスに走るのは危険を伴う。齋藤学は「ボールを持たせるくらいでいい」と言い切る。アデミウソンとともに守備の急先鋒となる喜田拓也は「自分とアデの判断が大事になる」と展望を語った。指揮官のゲームプランとともに、選手個々の判断を問われる。

仙台4-4-2 実は、それがゲームを難しくする最大の要因かもしれない。言われたことをやり抜く能力は高いが、自分たちで考えて実践する能力は意外と低い。ある程度の道筋をつけてあげないと能力を発揮しにくい性質のチーム、それがマリノスだ。

まったりとした低調な試合になる可能性も否定できない。そういった展開で、セットプレーを大切にして1点上回ることも必要だろう。もっともモンバエルツ監督は「我々のプレーを作っていく。それから相手の特徴に対して対策を練っていくこと。そこに関心がある」と語気を強めた。渋い勝ち方ではなく、いかにして仙台を上回るか。その上でリーグ戦3連勝となる勝ち点3を手にしたい。

 

【この試合のキーマン】

FW 9 矢島 卓郎

 コンディションは整っている。昨季は持病の股関節痛に悩まされ、シーズンのほとんどをリハビリで過ごした。しかし今年の2月下旬からは全体練習をしっかりこなし、この2年間で最も調子が良い。あとはどのタイミングで起用するかだけである。

 今回の仙台戦、矢島は18人の試合メンバーに入っている。おそらくベンチスタートだが、切り札として屈強なストライカーがベンチに座るのは心強い。モンバエルツ監督は「彼はほかのFWとは違うクオリティーを持っている。空中戦の強さがあってパワーがある」と自ら評価を口にした。こちらからの質問に対する答えではなく、自発的な言葉だから価値がある。

 仙台戦はいつもセットプレーがポイントになる。拮抗した展開になり、終盤にスコアが動くのも珍しくない。ゴールネットを揺らすのは、後半途中からピッチに登場した背番号9かもしれない。

 

 

 

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